6月号の同人の方の句をアイウエオ順にア~サ行まで掲載します。タ行からは2に掲載しています。
浜 松 安達千栄子
夜中の雨からだの奥でひびく
装丁にほれ込み本を買う
保護猫やって来た野良卒業
淡淡と一つ一つ終わっていく三月
さくら一心不乱に咲く
納戸色の空と湖が広がっている
東 京 石川 聡
ほらまた傾いた
苛めばみんな去る
春の陽さぷさぷ漉いて失意
ラッパ握らす裸の王様のご遺体に
人を傷つけ続けた者の句のない墓誌
触れれば善意たちまち腐らせる舌さき
不信の渚うちあがる緩慢なる滅びへ桜ふる
浜 松 伊藤 三枝
流れの曲がり角スクラムの如落椿
一面れんげ田とうに忘れていた春
蝶川を渡ってゆくその先の春
桜を歩くそれぞれ想い連れ
又又ねと散って行く春の駅
汗拭い草を取る足場組む音聞き
浜 松 大内 愛子
春うらら心もうずく外への一歩
句会に行きます装いは原らしく
散歩道早若葉となって日の光
土筆摘み思いもよらぬ友は無反応
春うらら横ぎる猫に睨みをきかす
老人会鯉のぼり揚げた後の柏餅
香 川 大西 節
遠い廃鉱の憂き目節分草かおを上げる
花のよりみちあなたの村雨にかすむ
牛蒡蕗湯掻く朝の空気残し
黄水仙ほぐれるおとなり様もういない
金比羅歌舞伎堪能地の筍土払う
櫻坂登りきり句座待ちきれない
花見帰り一便待つ海につづくプラットホーム
東 京 加藤 晴正
カップ酒今日は三人と話した
昨日の無様が覆いかぶさる午後
あずまやの向かいの角がうちの墓静か
喉詰まる苦味味わって一日終わる
古すぎる商店街に曲がりくねった落書き
ぼんやりした障子どうでもいいような日差し
足場解体してやはり古ぼけた家
東 京 上塚 功子
雪残る白川郷合掌の屋根にジョウビタキ
(北陸旅行五)
ことじ灯籠雨傘飛ばされ広重画の一景
主計町茶屋街雨を逃れあかり坂
車で走る千里浜体いっぱい日本海
突然雪の立山連峰「かがやき」敦賀へ突っ走る
柳と桜の名コンビ都はまさに春の錦
桜満開ころころ笑う子ら無心
福 岡 河合 さち
すったもんだの開花宣言ざわつくサクラ
海棠を曲がって花の道案内はコーヒー屋さんへ
クリスマスローズ春陽浴び過ぎ天仰ぐ
いつも素直で答えてくれる満天星とアマドコロと
引っ越し済ませ間に合った満開の桜に
香るほどのイチゴ絵手紙届いた解放感
孫は今日から一年生頭に肩に桜も応援してるよ
福 岡 清水 伸子
双子の女の子風と桜花弁に戯れている
山桜も二・三本あって裏山は若葉色
坂のぼれば青葉梅の謹賀見えて我家
今年も洗った亡夫のベストしみじみ桜餅
妻亡くした庭師としみじみ桜餅
週末早や真夏日力ぬけて行く
逗 子 杉本 由紀子
あなたが折ったピンクのオルガン鳴る机の上
繰り返し繰り返し肩を叩く春の雨
私の友だち白い小さい薬連れてゆく
ファーンとガタンゴトン会いたい新くん
言葉の海から遠く離れてしまった
電話のベル春の螺旋階段降りる
凛とした白いシクラメン深呼吸する
東 京 千田 光子
春が来た頭の中風紋通り
公園輪になって桜咲き人々うれしそう
隣りとの仕切りに鳩アタック
団地高齢者運営に翳り有り
仕事場に蜘蛛が怖いと母を待つ児
もんぺを握り母にまとわりついた私も
電話なり優しき声帯体に染みる
7月号作品より
浜 松 安達千栄子
さくらに狂った四月終わる
藤の香り満ち満ちて空に
たまには遠回り大きな雲見つけた
森もくもく緑の雲湧き上がる
暴れる太陽オーロラ世界に舞う
忘れるものかと痩せた叔父の背中
東 京 石川 聡
泥船になり続ける
苗の数本に痩せこけた地
石垣崩れた城きょうもどしゃ降り
虹の色いっぽんいっぽん消えゆく詩集
涸れかけた川であって暗渠になってゆく
クリスマスローズの青い俯きからHDの異音
むぎばたけに毒麦まじっていてたとえ話は聖書
浜 松 伊藤 三枝
草苺銜え飛び去る鵯雛待つか
雨上がる風の生まれる青楓
海辺の初夏レモン色のペディキュア
五月の風潮だまりに少し華やぎ
古いアルバムのいとしい日日母でいる
梅花うつぎ無垢な白真っ直ぐ生きよう
東 京 大川 崇譜
テランの雑草を両手で受けとる高い日差し
時間手伝ううぬぼれたこころの縫いかた
思い出は無いけれどよそのお母さんのカレーライ
散らかさなかったかのように花水木
隣のお互いさまのドクダミ引っ張る
音追いピストル昭和飛び立つ
東 京 加藤 晴正
曇り空突き刺した嘘もあったろう
何も知らなかったと今日もつぶやいてみた
旧友と「。」の無いおしゃべり
忘れているだろう苦い日の晴天
何も出来ないから目玉焼きが眩しい
急ぐ人の上に地球周回衛星
わたしの抜け殻布団の皺など
東 京 上塚 功子
シロツメクサの冠被った少女の頃の気持ち
緑の日三百六十度から若葉の息吹を浴びる
カイツブリひな三羽あっ四羽母を追いかけ浮葉を泳ぐ
緑のトンネルひらり揚羽蝶のお通りだ
そら豆三つ四つさやごと焼いて黒焦げ五月場所
妹が悲しい時泣いていいよと山法師の花
スケッチブックの早苗田に雨が降る膝が痛い
福 岡 河合 さち
長雨やんだタンポポ綿毛歩くほどに舞う
母の日孫の野菜炒め拍子切りばあばに聞いてくる
学園さつき咲きほこる女子大生の弾む声
湿度四十%誕生日にサマーラベンダー植えた
高齢者のおねだり叶ったお誕生日に夏帽子
新緑森の都熊本で集ういとこ七人高齢者
クリスマスローズ貰った友にアマドコロ三株届ける坂道
川 根 小籔 幸子
藤の花に和らぎ空向く桐の花に元気もらう
忙しくいらいらもかきつばたの花色が静めてくれる
細くなった髪そっと櫛を通してさあお出かけ
寒暖の激しい変化に溺れそう
茶工場いっぱい茶の香り新緑の中に溶けていく
新緑をすり抜ける初夏の風青春時代が蘇る
まあるく膨らんだ山トンビがゆるりと輪をかいた
福 岡 清水 伸子
アヤメいっせいに咲き出しそろそろ孫が来る
寒暖差背伸びしてる石段のスミレ
連休平凡に過ぎてゆく庭の緑コデマリの白
バラの香してくる小路上を向いて歩こう
餌台に賑やかな雀達坂を来てどっと疲れ
桃についた虫殺生いつまでも悔いている
逗 子 杉本由紀子
曇天の母の日私不自由じゃない
ピンクのカーネーション喜びも悲しみも知っている
燕の子たち勢いつけて巣立ちする
ここは田越川タイヤや錨を見せて初夏
今日見つけた夏の知らせの雲たち
始まった色とりどりの私のコラージュ
会いたいよ連絡は電話でいいですか?
東 京 千田 光子
オーロラ世界じゅうショータイム
薬局階段上る事出来ず自滅
娘が具合悪いと泣き時差惚けですと娘
今日は独りしみじみ兄の良さが解る
手を叩き烏追いはらえば車にお返し
8月号作品より
浜 松 安達千栄子
うぐいすの声に起こされる田舎ぐらし
ぐうたら猫と朝寝する日曜日
抜けるの忘れた眉毛がある
山頭火が見たという寺の藤を見上げ
雨女の一言あじさいには雨
新品の傘ひろげ一粒の雨の音
東 京 石川 聡
空耳は青時雨をうたう
遮断機が呑めよと鳴く
お墓で安堵を引き抜く
まどいもまくなぎもふりかぶる
その泥棒は心の鍵の型とっていく
無花果むらさきの被傷性ふくらます
くもりぞらは過呼吸しろあじさいも
浜 松 伊藤 三枝
調整池水突上げ鴨二羽のダンス
雨のすきまの晴あわあわ飛行雲
ひかりの粒は雨の子紫陽花の朝
花菖蒲の田へ水はこんこんと
欠けた月ひとり蚊遣りの匂い
暑さを帰り程よく冷えてる水羊羹
浜 松 大内 愛子
友との集い帰りはくっきり三日月
不安な出きごと友はおみとおし
気のりしない約束友に詫びる
そろそろ梅雨入り傘一本買いたして
夕焼を背にいつものコース少し変更
ひさびさに口紅ひいてどこかへゆこうか
ブランデーグラス友誘い乾杯
東 京 大川 崇譜
母のこす傘の骨昭和足りる
真上の太陽シマダラカ許可なく
ゆくよ耳の覚えているスプモーニ
綿毛はひとりきり雨遡り名を変える
キャベツ豚肉古本屋雨はこれから高円寺
ライラック香る冷やし過ぎたカフェの結露
メソメソなチャーハン六時をお知らせします
東 京 加藤 晴正
土砂降りの昼牛丼にしようか
広場にて声輪郭は溶け夏の始まり
夕空手に取るように暮れ
歩いた顔に張り付いたお日様
六月の晴れ間とろーんとした街並み
パソコンたどたどしくAの字は迷子
終点間近雨はまだ降らない
東 京 上塚 功子
暑がりと寒がりの戦いクーラーの出番いつ
子規さん球場黒土跳ね上げ盗塁セーフ
アラフィフ娘のめまい太陽フレアの影響ありか
未央柳に蜜蜂が来た受粉ばんざい
新丸ビル出たら東京駅のシンメトリー緑風の中
捩花の螺旋階段上った先は梅雨空
父の日おしゃれして息子と映像チャット
福 岡 河合 さち
庭の杏コンポートにして夏が来た
丸ごとのスイカ二個も戴くどうしよう
井戸に浮く麻縄のスイカ幼少頃鮮明に
一人日曜日仏さまと新茶楽しむ
十九日遅れの梅雨入りと同時に警戒レベル
おニュー夏帽子ちょっと深めに買い物デビュー
孫三人の水筒は氷とお茶満タンに朝のルーティン
川 根 小籔 幸子
たぶん水曜日だいじょうぶ
紫陽花ぐるぐるメリーゴーランド
犬も私も水を飲む
追いつめないで深呼吸ひとつ
慣れたバス停さよならしたくない
3人でご飯美味しいね美味しいよ
渚が近い匂いがする部屋 逗 子 杉本由紀子
たぶん水曜日だいじょうぶ
紫陽花ぐるぐるメリーゴーランド
犬も私も水を飲む
追いつめないで深呼吸ひとつ
慣れたバス停さよならしたくない
3人でご飯美味しいね美味しいよ
渚が近い匂いがする部屋
東 京 千田 光子
先輩梅干しの作り方教えてと電話入る
荷物開ければ家中梅山城になった
大小さまざまな梅うれしそうに並ぶ
隣りのビニール烏お陰で一息付き
自転車くねくね「真っ直ぐよ」注意すれば怒鳴り声
荷物の中にサザエさん本開けば懐かしく
貸本屋に入りびたりだった帰れば両親角が出て