近作玉什・巻頭

【近 作 玉 什】

七月号作品より         中塚 唯人薦
  ―夏の香り―
月をピックに弾く            石川  聡
今青葉の海を泳いでいます        伊藤 三枝
空豆とび出した晴天つづく        大西     節
貧乏草なんて牧野富太郎のハルジオン   上塚 功子
日ごと色付く杏は予約済み         河合 さち
小父さんが傾いてゐる立夏かな       空    心   菜
静かな雨の音山も木もみんな聞いている   小籔 幸子
紫陽花がアクセント雨あがりの庭       中村 加代
パセリを食べる青虫の未来          原  鈴子
赤ちょうちん探す二人の春の鼻唄       平林 吉明
支離滅裂に雨跳ねて夏近づく         松田 慶一
朝の寝ぼけた頭に染み入る日射し       無   一
風駆ケテイク北国ノ春            森  直弥
五月晴れ続くそろそろ麦に待つ心       森   命
ふわんふぁらん牡丹に酔う          若木はるか

 

【巻頭句】

今月号作品より

文月の午後         浜 松  安達 千栄子
新茶の旗色あせてきた梅雨に入る
一日延ばしの草とり草は待ってくれない
「三島」も古典になっていく本屋の棚
猫のあくびと私のあくび何もない午後
米研ぐ音静まり返った夜
のんびり時間が過ぎていく朝の気配

 

 亡くなった母へ                 東 京  加藤 晴正
皆引き上げて多摩川の草ばかり
遺影抱いて晴れて良かったと月並みな
もう着いた頃だろう母の靴を捨てる
墓くだれば三浦の海空を飲み込む
答える人無く「ただいま」の日暮れ
母の服まとめ無言の清掃車