海紅俳句 2

月号タ~ワ行の方の作品です。
ア~サ行は「海紅俳句1」にあります。
              牛 久  高橋  毅
内水氾濫去り頭をもたげ出す早苗達
大谷翔平で目覚め締め括繰られて安眠
チャットジーピーティ最後の意欲
滾る田稲ほきるいろんな声が聞こえる
人間は中途半端だが真剣に生くべし
異次元少子化対策効果なさそうこれぞ異次元
下請け構造露見マイナンバー巨悪増長 

              横 浜  田中 耕司
十薬はびこるとんがりヤスの十字架
ノイバラの花が咲きました小さな桜色
タチアオイ一列に並んだ一号線混んでます
今年の昼顔は色が濃い真夏日
ピンクのノーゼンカヅラなんてでたらめじゃないか
もう少しがんばれよクチナシもう錆色だ
あたり年だなビワが鈴生りそこらじゅうビワの実 

              倉 敷  中塚 銀太
春が逝く暦めくって誕生日
五月末お天道様お急き梅雨の入り
暦は夏もっと啼け啼けホトトギス
痩せたな骨を感じて更衣
老衰だよ細くなっても焦らない 

              東 京  中塚 唯人
ミニトマト六つ七つ夏はやっと赤くなる
お月さんそろそろ起きるころ
ハンゲショウが変化する夏はきちっとやってきた
サギ草が咲き始めた事はまた一つ歳とったこと
スイカの種ぶっ飛ばすのが夏の決め台詞
クーラーを掃除して貰うまっ黒な芥は私の憎悪
雨に負け風に負けても私には明後日がある

              浜 松  中村 加代
新じゃがは三方原赤土の大地味はほくほく
近しい人次々と読経空しく
亡き人偲びお念仏降り続く雨
梅雨の中休み洗濯物目一杯干す
Tシャツブラウス白が好き夏が来た
ねじ花ねじれて捩れた世を憂う

              浜 松  中村 美代子
庭木の剪定夫の出番片付けはあした
新じゃがをレンチンバターにビール
梅雨どきヨガマットにハッカ油一滴
ヨガウィークオンラインレッスン無料
楽しんだ者勝ち句作りもエクササイズも

              倉 敷  原  鈴子
咲き始めた約束の日の夏椿
いいところ見せようと私に向く夏椿
里山の桔梗の小径見つからない
この平らな道でなぜ躓く半夏生
そのままのカタチが黄昏て地に夏椿
活字が追いかけて来て私の影にぶつかる
シジミチョウ消えそうな葉裏の恋
              横 浜  平林 吉明
耳鳴り梅雨を包み込み
座ったまま眠る白夜の気配
紫陽花の雨に濡れる人間の仕業
今は亡き母 深夜の湯舟
草叢も夏 あこがれ叶わぬまま
蒼ざめた睡眠薬ひと粒の省略

四日市  正木 かおる
部屋に帰ればポートレートが笑ってる
近づけばケキョと訊いてくる鳥
五月の風に綿毛の渦に巻き込まれる
水浸しのヴェランダ紫陽花が終わる
ゆく人の意地悪などとうに忘れた草の花
山菜おこわ一日を噛みしめる
トウハゼの枝の先みてる冬が来るまで             

              西 宮  松田 慶一
雑草もドクダミと気付けば光りおり
梅雨晴れのブルーインパルス
落ち込めば夏の海
銀河の隅で猫眠る
梅雨曇に陽を求めて歩く
開かずの踏切夕薄暑
干しイカのエンペラは夏の海を指す         

              福 山  無  一
死んだように眠る顔をつんつんと蝿
独居に行ってきますと朝
またひとつ掃き溜めのノートを捨てる朝
ちっぽけな虫にも自動ドア
膨らんだりしぼんだりストレスの風船
買わなくてよかったと立ち読みの後
病んでいる犯罪の増えている  

              横須賀   森  直弥
湿度むわりと草木ら膨らむ
夕焼け夏椿花びら染めて
ひょこっと顔出し群れる紫陽花          

              岐 阜  森    命
造花のバラ落ちた梅雨入り台風ひとりの部屋
高野口七曲り妖しい白は雪の下
石段を数えてのぼる妻の紀三井寺
梅雨なんぞ青ジソに餃子を巻いた舌ざわり
汗と野良着と思わぬ奴とプチ同窓会
今年不作のトウモロコシやけにいとおし
孫の好物を孫の名前で呼ぶ畑

              東 京  吉川 通子
台風一過ゆりかもめ颯爽と海を行く
台風の被害ここにも未央柳しかめっ面
ここにいますと栗の花ゆれる
歩くリズムでシャカシャカ水筒の氷
米粒大の白い蕾やがて南天の赤い実
ひとり占め咲き始めた泰山木の花真白
か細い手が包む草餅二つお餅やさん開店

              山 形  若木 はるか
緑鎮もる梅雨の気配
楽しみに保険はかけない
ビヨウヤナギ金色の睫毛ばっさばさ
白い花ばかりをたどってゆく山道
何の絮か漂うている
暑くてもうひっくり返ったのか紫陽花
ピアニストの指ひらめくたび浮かび上がる金色のSTEINWAY