新春譜

  如是COME ON           さいとうこう

 平成二十八年十一月十九日土曜日、駒沢大学駅の改札口で青いコートを着た私は社主の迎えを待っていました。曇天の中、冷たい秋の風に運ばれたミストのような雨粒が全身を覆っていたと記憶しています。

「君が西藤君か!」
「はい。今日はよろしくお願いします。」
「なんでうちを知ったの?」
「海紅のWEBサイトを拝見しまして…。」
「一人で来るなんていい度胸しているな! ハッハッハ」
―初めて海紅社の門をくぐってから、あっというまに一年が過ぎました。
自由律俳句のイロハのイも分からぬ私にとって、まさに光陰矢の如く時が流れてゆきました。
 句はどのように作るのか。自分の感じた感動をそのまま句にすれば良い、とはどういうことなのか。俳味とは何か。そもそも自由律俳句とは何か。自由律の「律」とは何か―句作を始めた当時のメモ帳に書いてありました。今もよく分かりません。
 今確かに理解できていることは、俳句は楽しいということだけです。

 海紅の句会では社主、耕司さん、吉明さんのような大先輩方であっても同じ立場、同じ目線で私の拙い句に感想を述べてくださいます。社主はこれが海紅の伝統だと仰っていましたが、自分よりも四十歳近く年下の(しかも新人の!)男に対してですから思わず感動してしまいました。と同時に面白い世界に足を踏み込んだものだとワクワクしたことを今でも覚えています。
 ゆきこさん、聡さん、崇譜さんのように独自の信念と矜持を持って句風を確立されている先輩俳人と出会えたこともこの一年間の大切な財産です。
 またマヒトさん、すすむさん、直弥さん、由紀さんといった同世代の若い同人の方々との交流は句作の上で大きな刺激になっています。
多くの出会いがこの一年の間にありました。俳句を始めなければ、そして海紅に入らなければ起こり得なかったものばかりです。この場をお借りして改めて感謝を述べさせていただきます。

 上述のように東京(横浜)では多くの出会いを経験させていただきました。そして今年はすこし東京を飛び出してみたいと思ったりしています。
地方にはその地に根差した海紅人の先輩方がたくさんいらっしゃいます。そういった諸先輩方になるべく多くお会いをしてお話を聞かせていただきたいと思っております。その折はご指南のほどどうぞよろしくお願いいたします。
 自由律俳句を始めて気付きました。今まで私が見ていた世界は、それ自身のほんの一面に過ぎなかったということを。

 いつかの句会で耕司さんが仰いました。
「同じような景色でも毎日観察していると毎回微妙に変わっているんだよ。だからよく見なくちゃいけない。」

 あきあきしていたはずの日々の暮らしが俳句と出会ってすこし楽しくなった気がします。

私の選んだ世田谷大代銘木その1「駒沢公園辛夷」(唯人)