各地俳況2

【海紅社句会レポートⅠ】一月二十一日 坂本 優子 
 新年初めの句会です。人より大きな佇まいの胡蝶蘭ときゅっと可愛い張り子の鶏が新しい年の空気をつくっています。久しぶりに由紀さんが参加しました。

 広太さんの句から始まります。
  具が謝る味噌汁すする
 この句については、みなさんの食べ物へのスタンスが様々出ました。味噌汁の具の貧相さをイメージする人、しかしそれは料理人の問題ではないかという意見、貝類が謝っているようなイメージを持った人、どれをとっても味噌汁との距離がとても近く、「愛されているなあ、味噌汁」。
  妹撞きし福音響く「結婚します」と除夜の鐘
 おめでたい話です。福音はキリスト教、除夜の鐘はお寺のものと感じるため違和感があるという指摘もありました。様々な宗教がとけ込んだ生活をしているから出て来る表現でそういう違和感も面白いなと感じました。

 次は私、優子の句です。
  相鎚ばかりでリズムが生まれる
 これは句会行きの電車での句です。一人で電車にのっていると様々他人のお話を聞いてしまうのですが、ご夫人二人のうち片方の方の「んー」が話の内容よりも気になって仕方がありませんでした。
  標準語の垢落ちる
 垢落ちるが言葉として強いという意見がでました。音としてあ(あ)か(あ)と「あ」がかさなっているのがさらに強くなってしまっているという話でした。服を脱ぐ、等でも良いかと思ったのですが、作為なく訛が戻る感じがこれが一番近いかなと感じています。
 
 ゆきこさんの句です。
  十四歳の少年のグー五十過ぎの女のグー
 じゃんけんとして捉えた方はパーでも面白いんじゃないという意見が出ました。前回かここ最近のゆきこさんの句で十四歳が出てきた句があったため、そちらとの関連を感じた方もいました。作者としてはグータッチ(拳と拳を軽くあわせる挨拶)や怒りの拳としての意味合いもあるとのことでした。グーは絵文字でも良いかもねという話がでました。
  着崩し様になる中央から来るアメリカさん
 中央とは横須賀中央という横須賀市内の中心駅です。米軍基地も近くたくさん米国の人たちが歩いています。そこが通じないと思うよと意見多数。横須賀市民としては中央は中央という言葉でもう意味合いが発生してしまうのですが、共通語としては隣駅の汐入にあるドブ板通り(基地前の米軍むけに発展したアメリカンなにおいの飲み屋とスカジャン屋や似顔絵屋があります)などが使えそうという話になりました。

 吉明さんの句です。
  寄り添えばりんごジャム
 一個ではジャムにしようとは思わないですよね。一人ではりんご好きでない限りジャムを作るほどりんごを買わないでしょうし。りんごはアダムとイヴも連想されて冬のりんご以上の感じがあります。
  あなたにつながらない傷口をさする
 読み手にまかせる、結論が出てなくてそこが良いという意見が多数でした。過去を視ている句なのか現在なのか。

 唯人さんの句です。
  おせち飽きられ三が日がしょぼくれる
 おせちの句は他にも出ましたが、前ほどおせちはごちそう扱いされないねという話題になりました。でも晴れやかで良いですよね。
  正月締めくくるボロ市ひとひとひとあしあと
 十五日で正月がしっかり終わってしまいました。ボロ市では最後に花火があがるそうです。どんどん人が増えてゆっくり手にとることは難しかったようです。

 耕司さんの句です。
  全力疾走に入った白梅にはかなわない
 白梅は咲き始めると一気に咲きます。かなわないがなくてもという意見も出ましたが、かなわないって言いたいんだよなとおっしゃっていました。
  葉の落ちた枝に花梨の実がひとつ残った
 取らないで残った花梨の実。そのまま食べられない、ひと手間が必要な花梨。葉に隠れ取り忘れたのが収穫日の後に色づいたのか。イメージすると点で残る黄色がきれいですね。

 聡さんの句です
  路のひびにも理由あろう凍った皴
 ひびの間に氷がはっていたのを発見したそうです。ひびと日々の二つの意味が重なって道路の時間経過や素材の経年変化まで発想しているのが面白いなと感じました。
  墓地の霜柱ザクザクま白き卒塔婆立てられる
 冬の墓地は静かだったんだろうなと感じました。卒塔婆があるから墓地はなくても分かるねという話も出ました。胸の中で浮かぶ思い出がたくさんあり、より一つ一つの物音が印象強く感じられたのかなと思いました。

 崇譜さんの句です。
  だんご門仲さむぞら海苔で巻く
 門前仲町。横須賀中央との知名度の差を感じずにはいられません。冬のお出かけも楽しそうだなと感じます。厚着して外に出るのも悪くないですね。
  紬もらい叔母のいままでなかったことに
 初心者の私としては叔母さんが句に出て来る! という衝撃がありました。親戚との距離や出来事はひとそれぞれだとは思いますが、何があったのかとちょっと想像してしまいますね。それにしても美しいものの力はすごいです。

 由紀さんの句です。
  みくじの一番下が凶
 探して探して凶が出るというのは悔しいですね。そこから凶がはいっていないおみくじや凶ばかりひいてしまう人の話が出ました。
  花壇寝たふり陽射しやってきた
 春にはまだ遠いですが、花々がなかなかこない陽射しにいじけて寝たふりをしているようで可愛い句だなと思いました。太陽もごきげんとりをしているようですよね。
 途中で私の感想ばかりになりましたが少しでも様子が伝わると良いなと思います。ちょっと海紅をさかのぼって先輩方のレポートを読んでいたら平成二十八年九月号の耕司さんの句が花梨を詠んでいました。八月号は「かたいみどりいろ」で今は黄色。同じ花梨の木なのかなと発見した気持ちになりました。
  纑蚊帳にくるめし愛人(そなた)をそっと捨てんかな
の一句です。
                  海紅社床の間の胡蝶蘭