各地俳況2

【海紅社句会レポート】七月十六日   小早川すすむ
                                 目黒区・鷹番住学区センター第三会議室にて
 参座六名。被講は聡さん。東京で記録的な暑さを記録した土曜日の夕方、十六時から開始。

  湾岸プラントの錆びた毛細血管                                 聡
 この句を詠む時、作者は「雨の」「我が」といった気候や心情の説明的な語句を次々と省いてゆき、今の形に辿り着いたそうです。この句を評する意見の中に「都市が生きている感じがする」「自然を詠むより俳味を感じる」「現代の詩情がある」といったものがありました。都市に、そして現代に生きる者にとって、花を描くよりリアルな句として受け取られたようです。私もまたそう感じた一人です。

  幼稚園の笹の葉誰ぞ持って行きなされって青青                           唯 人
 句に色を入れるのが海紅の伝統なんですね。作者は今回「青青」という言葉を使い、「七夕前」の瑞々しい笹の色を表したそうです。「誰ぞ持って行きなされ」という、歌舞伎のような時代がかった言い回しも、笹の葉を擬人化したキャラクターとして面白く「長いけど優しい句」という意見が印象的でした。

  太陽が夜を噤む                                こ う
 文法的に結句の「噤む(つぐむ)」は「噤ませる」、もしくは「太陽に夜が噤む」が正しいのではないかという議論になりました。これに対して作者は「敢えて〝てにをは〟を崩しながらも意味を伝えるスタイルを目指した」とのこと。確かにこの句でも意味は通じますし、文法的なちぐはぐも句の魅力に繋がるのなら、むしろ面白い試みになる…と、この路線に賛同する意見も出ました。

  大腿筋は行先のない階段                 崇 譜
 作者の句には「肉体の衰え」を読みながらも、暗さや湿っぽさがなく「明るさ」や「前向きさ」が込められており楽しい…という指摘に納得。「行き先のない階段」という言い回しも魅力的で、このフレーズを使って他の句も作ってみたいという意見も出ていました。

  新幹線ビールの開く音                                       マヒト
 動き出した新幹線のあちこちで、同時多発的に缶ビールの開く音が聞こえる…という光景に共感が集まりました。他には、日本の新幹線の走行音の静かさが句に出ているという意見も。一方で「開く」を「あく」ではなく「ひらく」と読まれると句から音が消えてしまうという指摘や、もっと短く「の」や「音」が削れるのではないかという意見も出ました。

  五階から飛び降りた光                                      すすむ
 自分の句です。さまざまな読み方をしていただきましたが、自解は「薄暗いアーケードの一画が吹き抜けになっていて、その地面にだけスポットライトのように光が落ちている様」を描いたものでした。意味深な「五階」の部分に引っかかるとの指摘が出て「一階に飛び降りた光」はどうかというアイデアもいただきました。
 句会終了は二十時前。全三十三句。