各地俳況2

ハバタキ 

テーマ 日記としての自由律句
 自由律句のひとつの魅力は、日記として成り立つという事です。日記は徒然なるままに書くのもいいですが、短い文章に凝縮してこそ、その時の場面や感情が表現できるのではないかと思います。場面と感情の両方を句に詰め込むことが出来るツールでもあり、詠む側と読む側を同じ気持ちに近づけるのも、この日記的な要素があるからではないでしょうか。日記としての自由律句、どの句も作者のリアルな日常であるということ、生きている証であるということです。そして読む側に共感や感動が与えられる句であれば、さらに良いと思います。「自分らしくある」ということが大事なことです。

最近亡くなりし人の文書と出会う     無 一
 最近亡くなったのは、地域に貢献していた元気印のような方でしょうか。片付けの最中に、その名を冠した文書と出会い、あんなに元気だった人が・・・と人生というものに思いを馳せているようです。

孫も来る暮の買い出しメモ帳忍ばせ    大内 愛子
 年末のスーパーの活気と、久々にお孫さんと会える喜びに張り切っている様子が素直に伝わってきます。

藻の水槽掃除泡を出しめだか喜ぶ     折原 義司
 水槽の掃除は中々億劫ですが、いざやり出すと徹底的にやりたくなるもの。めだかも喜んでくれて苦労した甲斐がありましたね。「泡を出し」に、ただの日記に留まらぬ詩情があります。

丸み帯びてきた児に胸撫で下ろす     河合 さち
 少し小さめに生まれた児(孫)、或は病気がちだった児が、ようやく丸みを帯びてきたことへの安堵から、思わず書き留めた一言。読んでいるこちらも嬉しくなります。

底冷えの夜湯船の温度一度上げた     小藪 幸子
 冬のど真ん中、明日も寒くなりそうです 。一度ぶんの優しさに包まれ、春を待ちわびています。もの悲しくも希望も感じます。

正月二日朝焼け朝湯にゆく        田中 耕司
 正月の朝湯は下町の粋な風習ですね。無事に歳神様を迎えた慶びを裸で分かち合うため、朝焼けの中をゆくなんて、作者の粋が存分に発揮された一句です。

骨董市古伊万里値切る人いて最終日    中村 加代
 作者はお目当ての品に巡り合えたのでしょうか、それとも冷やかしでふらりと訪れただけだったのでしょうか、古伊万里を値切る人物を見つめる作者の心情が気になります。

視力は良好わずかな余生はかすむ     渥美ゆかり
「視力は良好」ということは、今日突然なったのではなく、昨日からの続きであり、「余生はかすむ」とは、その時の感情ですので、日記として成り立つと思います。深い感情だと思いました。

雨あがり無口になった水溜り       加藤 晴正
 雨上がりって、作者は歩いていたら水溜まりを見つけたのでしょう。無口になったのは、作者でもあり、水溜まりでもある。ふとした一場面です。

元旦のラジオ体操1年の計は立てずにいる 上塚 功子
 元旦だからといって、特別ではなくいつもと同じようにラジオ体操をしている作者の気持ちが伝わります。「1年の計も立てずに」でより日常ということも感じます。

母親のいたとき思ふこのサボテン     空  心  菜
 お母様の生前からずっとあるサボテン、そのサボテンを見ていろいろな思い出に耽る様子。日記として現在と過去という時間を共有しています。

忘れられた靴の片っぽにもおめでとう   中塚 唯人
 玄関に靴が片っぽ、年末の大掃除の時に下駄箱からでてきたのでしょうか、この靴の持ち主に対する愛情を感じます。「おめでとう」と新年を一緒に迎える気持ち、日記の一ページです。
六月号の担当    杉本ゆきこ 大迫秀雪 平林吉明