海紅俳句 1

月号の同人の方の句をアイウエオ順にア~サ行まで掲載します。
タ行からは2に掲載しています。

            浜 松   安達千栄子
真っ赤なしそジュース元気を飲みこむ
猫の肉球ほっかほか朝から入道雲
梅雨あけの雷幼子へそ隠し
汗の粒新聞に落ちるヒロシマ忌の朝
台風連れ去った里帰りの車
石鹸はバラの香り汗だくの体にご褒美
半分だけの都会の空灼熱の道

            浜 松   渥美 ふみ
もみじ葵は一日花あすあさっての蕾
平泳ぎのターンしなやか十代の肢体
闇を濃くして打ち上げ花火の間《ま》が長い
豊満すぎる夜盗虫見逃すしかない
船虫に七対の足右へ左へぞろぞろ
土用波漁師の首の手拭い白き
ちょんの間蜘蛛の巣増えるばかり

            浜 松   渥美ゆかり
テッペンカケタカ里の朝があけ
夏の雲になった草を抜く
雨の一日は愛の追憶
盆に入る今年も帰って来た黒い蝶
暑さじりじり蝉じいじい
真夏の傲慢少し痩せたような
空蝉枝にしがみついてさらす生涯

               秋 田   伊藤 角子
スーパーの防犯カメラ燕の巣が残っている
蜘蛛の巣に掛かった蛾くるくる回っている
一度に植えて一面に咲いた赤いグラジオラス
枕木の音携帯電話の話しが見えない
異常気象に目覚め途切れない雷光
猛暑続きコスモス疎らに咲いている

               浜 松   伊藤 三枝
偽りのない空鬼百合さいた
長かった梅雨凌霄と青い青い空
太陽弾き返した海静かに暮れ
台風海は魚何処に隠す
えのころ金色零し秋へ傾く

               東 京   岩渕 幸弘
なにもないままなにか無くしている
ひき金ひいた指の辞めかた
イカれたふりして後ろ指抜いてゆく
七日を終えた蝉の分配
だらくをくだるらくだむしゃむしゃ
炎天晒すごみ生の逆襲
だからなんだと石っころ慰めてみる

               浜 松   大内 愛子 
灯籠流し思いをのせ闇に灯り小さく
夏祭り雨となり一気にしぼんだあの気持
花火も終り着崩れた少女ら下駄の音
終戦日孫達とすいとん談義だけに過ぎ
盆もすぎ客も去り一人ぽっちのハイボール

               東 京   大川 崇譜
蝉はじりじり終えていくスケマティック
西南西長岡残したけむり
夏終わらせたしずかな装置
あさりの仲間思い満潮を待っている
すべりだしまではよかった何でもない日
水をのみなさい水をのみなさい
君バッテリー残量を気にすることなかれ

               加 須   大迫  秀雪
一晩中虫が鳴く枕元のうちわ
雨上がり薪たちは虫を聴いている
さっきまではしゃいでいたのは誰だろう
酔って妻を口説く
利き手とは逆でといだ米炊きあがる
犬もみくちゃになでて出掛ける
電波電波、誰《た》が心臓を威嚇する

               香 川   大西   節
土用梅うら返す友の安否
蛍袋ひとつ灯らない日暮れ時
半夏生の空白にメモする
雨つぶて野薔薇はなびらはりつく
もういいかいもういいよう川風にのせ
雨叩く亀の背にくり返し
手にあまる桃あらってアラッテしあわせ

               防 府   岡原  舎利
あんた機嫌がいいけど大きなうんこもらしてます
祭りを避けて山越えして帰る
大茄子にならぬまま食われる
機嫌よくバイク走らせ通り越す
こいこいばかりで恋は生まれず
白壁の向こうは天国か花咲乱れ
うどん屋の前というけどうどん屋を知らぬ

               氏 家   折原  義司
暑い得意気に馬やゴーカートに乗る孫
蝉時雨今出来ることやればよい
蝉よ十日間鳴き任務全うせよ
台風十号風雨猛暑やりたい放題
そろりとちちろ鳴く暑さピークすぎたか

                福 岡   河合  さち
おはようで一日始まるあつーい夏休み
ビーチサンダルで水溜まりに孫と信号待ち
沖縄四句
孫四人ジンベイザメTシャツ美ら海キラキラ
砂浜キラキラミサンガアンクレットチャラチャラ
沖縄の新婚四年海の色とオスプレイ
オスプレイバタバタ海低く孫を抱く
海のこと自由研究追い込みラインでエール

               足 柄    河合  禎
防災無線 熊が出たと 金太郎に会いに来たか
藪萱草の橙 わが庭唯一の彩
蕾ふくらませて百合 号砲待っている
梅雨は嫌 猛暑はもっと 年寄りの我儘
空のリュウグウ訪ねるハヤブサ今様浦島

               東 京   笠原マヒト
石灯籠蝉の脱け殻踏ん張る
川は流れて人はなし
青い山々温泉街の提灯は白
長い階段の先石碑だけ
真っ黒な鴉輝く羽ばたく
誰も読まない句碑が木陰
波をカモメと見る

               国分寺   梶原 由紀
秒読みの雲を撮る
水茄子しぼむユウメイジンの失脚
猛暑に擬態語は止せ
八月コーラに国籍がない
皆で見た木ほそい木セミはいない
夕陽の噴水を騒ぐ
サイレンあちらの病院にない残暑

               東 京   上塚  功子
胸とお腹のCT検査六年目の夏も無事
誰の仕業か縁石に空蝉の行列
猛暑日続きで子規さん朝顔咲きません
博多のシャンシャンも聞こえる都の蝉しぐれ
公孫樹の雨宿り位置について繰り返す
盆踊り熟練の手さばきは流線形
天気アプリ35度それならエアコン26度

               松 阪   河内  秀斗
このさようならを最後にしよう今度こそ今度こそ
喜怒哀楽が並んでいる日曜日のショッピングモール
この青空に屋根耐えられるか
この市民プール過去というタトゥーは大丈夫かな
好きにテレビを観られるようになったが独り

                東 京   木内 シ ン
広場はみな右脚から踊る
泣き虫の眼鏡に空
円柱貫く蔓螺旋に駆ける

            横 浜     空心菜
階段に爪楊枝
雨粒はなにか親しげ間欠のワイパー
水のトラブルが落ちてくる
置く位置によるメガネケースの話かな
ハンカチが落ちている
万札を電子手帳に乗せている
駐車場⒗⒖⒕と

               大 仙   熊谷  従子
八月の昭和史ひとり繙《ひもと》いて
気温三十五度畑のトマトの赤い悲鳴
網戸に縋《すがり》り付いて朝へ飛び立つ蜩の一声
オクラのカレー作り僅かな涼呑み込む
迎え火から夫の声「私令和を生きてます」
田んぼアートは男鹿のなまはげと秋田犬
ひまわりの丘そこは老人ホームです

               東 京  小早川すすむ
夏日転がす東京七百の坂
蝉喘ぐあなたの殻を剥く
夏それぞれ色の足のつめ
湾曲する東京に沿って僕ら
渋谷交差点行き交う素数
残り香と散歩の続き
夏の虚無にテトリス落とす

               川 根   小籔  幸子
夏の夕暮れ夕顔そろりそろり開く
夕立通りすぎ山の緑夏空に映え
迎え火たく孫の顔赤い
山向こうの空明るく一呼吸して音がする花火
山あいの花火の音あちこちの山に谺する
ナスの牛キューリの馬仏壇に並びご先祖様を待つ
畳の匂い疲れた扇風機の音ここが一番好き

               東 京  さいとうこう
ハンカチ折り目正しく福祉の児らのかき氷
向日葵の日暮れた無言が並ぶ
歩兵であるひまわり夜の静か
石鹸の目にしみ蝉時雨
麦わら帽あみ目ひとつひとつ夏綻ぶ
ヒロシマ忌少女が家出した時刻
丸い背の途方もない夏の長崎

               福 岡   清水  伸子
熱帯夜地球の怒りおさまらない
がんばれ鬼ゆりまっ赤に応援花
雷鳴とどろき暗黒聖書のような夕
冷ソーメン薬味はすべて庭のもの
東京バナナ途方もない大都会忘れてしまった
朝から少し風吹き日暮れも早くなり

               横須賀    杉本 ゆきこ
理不尽草の咲く脇道
夏雲くっついたり離れたり
エイトビート練習する波音
小さな手つなぐ花みた星みつけた影ふんだ
狂った緑色の群れ
彼女の哲学は溶けだした
ミンミン蝉の声止まらない秘密基地

               武蔵村山   千田 光子
夏休みベランダに子供服目だつ
クーラーの中ステテコにシャツおやじが居た
洗たく物取りこむせみも一緒
水道いくら流してもぬるい