海紅俳句 1

新年号月号の同人の方の句をアイウエオ順に今回はア~サ行まで掲載します。
   タ行からは2に掲載しています。 

                 浜 松  安達千栄子
気ばらしに山盛りの豚汁を作る
月冷たくなっている優しさ残っていますか
ため息のスイッチ一つ増えた冬がはじまる
猫まん丸ほんわかストーブついている
栗きんとんばくっと秋をほおりこむ
コート引きずり出してやっと冬支度
一つ一つに心ゆらぐちょっとお疲れ中

                 浜 松  渥美 ふみ
旅キャンセルしてやけに匂う湿布
青信号びびらせた鵯の羽音
背ふくらませた猫がいて休診の札
如何にせん根っこ食べ尽くしのうのう生きてる
ほどほどの我慢蔓もどきの実爆ぜた
杖の夫婦せきたてる横断歩道の点滅
哀しみ峠を越し仏間のやわらかな空気

                 浜 松  渥美ゆかり
秋の味覚料亭の石段満ち足りて
雨やっと涼しさつれかたわらの秋明菊
夕日美しすぎて小舟は暗い陰
鳥は翼を持つ湖の広い空
月が出た出た小さな門をあけ
十三夜今夜の月はどんな物語
選択肢はない秋には秋の山色

                  東 京  石川  聡
とうとうトートの取ってが取れて()腑爛栖(フランス


ジャニスにゃ()されん気力秋晴れ
赤黄紫サプリ七草秋の喉に咲き
香の森ウヰスキーやわらかい鍵
白菜ひだのひだまで寒を巻く
(こがらし)ドリル冬の穴ひとつめ
過半数です冬議席

                 相模原  院瀬見美登里
息子と歩く無口でも晩秋の陽なたみち
ステーキを食べるやっぱり若いフォークとナイフ
ひと言で別れる駅前それで充分

                  秋 田  伊藤 角子
真正面に見える鳥海山初冠雪
手元で虫の音草取り休む
海からの台風青楓潮焼け
東の山並にお月さんまんまる
いちょう並木の黄葉街を走る

                 浜 松  大内 愛子
秋も深まり此の道行きかう人なく
保険証診察券明日は夫の付き人
大皿みごとに朱の色感動を内秘め帰る
年寄りと気安く話し合い公園の陽だまり
人声に鳥飛び立ち惜しげなくピラカンサス散らす
手帳買う来年の予定少しずつ

                 東 京  大川 崇譜 
秋切り分けていく柿の公約数
ジュヴレ・シャンベルタン染まる私のtongue
チーズと寄り添う不透明な赤
からっかぜ抱き合わせ売る土鍋かな
定期券ごと洗濯した秋no限定
東をはり崩れていく土俵
十年後アキレス腱また剥がれていく

                 防 府  岡原 舎利 
トイレットペーパー買って小さな幸せ
天使が舞い降りてもいいような空き地あたたか
朝からなにもしない鳥も鳴かない
机上乱れたまま源氏物語は冬を迎える
朝霧の中気難しげに自転車をこぐ人
この晴天バイクに乗らねば罰が当たる

                 氏 家  折原 義司 
土佐楓のライトアップに妖精跳る
通勤車のガラスに薄氷けさの冬
障害者が働き出来たロゼワインを買う
酒でカラオケがなるストレスよさらば
青い空陽が落ちて身に沁みる寒さ
霙るる赤い傘さし立つ人の胸は

                 福 岡  河合 さち
母の洗い物終って若冲見て来た二時間
美術館帰り熊本城の崩れかけた石垣と母と
帰り着き庭中の落葉拾い今は淋しすぎる
一人野菜おでん三人前いきなり冬来た
チューリップ球根一人孫増えて咲きます
暖房よしツリーよし明日孫が来る
ツリー飾って一人小春日を楽しむ

                 足 柄  河合  禎 
ピンクの山茶花またよし友が来る日
千両真っ赤になって冬を告げる
白侘助もう少し頑張れ太郎冠者までだ
雪無い里から見る富士白く輝いている

                 東 京  笠原マヒト 
戻ったら間違えた道
突然自動販売機うなる
夜寒い音がする
暗闇話し声が行き過ぎた
外は始まったばかりの冬
音のない雨揺れる葉で知る
細い坂道はいつも通る

                 国分寺  梶原 由紀 
勝ちたがる女と居る立冬
こじつけに負けエビよく曲がる
のろける顔の自由
こんなはずじゃないバブを潰す
他人の想い出だけど冬天淡色
寒い日の影が眠っている
しかられたい日の中央線から中央本線

                 東 京  上塚 功子 
嵐の置きみやげ一等星いくつも浮かぶ
立冬の朝のお月さん明るい
紅葉色の池の真ん中かいつぶり潜水中
山紅葉吊り橋渡り合掌造りの里に入る(白川郷)
晩秋合掌造り白障子に陽の光(白川郷)
軒先の梅もどき紅く雪景色を思う(白川郷)
今朝の静けさ一変し観光客の路地となる(高山)

                 東 京  木内  縉 
書物崩れて砂漠
北風の動物園に犀がいない
現像できずにいる金閣寺と君
長き夜に自らの骨を運んでいる
満月に見開けばアンドロイドに似る
どこを掘ってもタイムカプセルだった
星を吸うミネラルウォーター並ぶコンビニ

                 横 浜  空 心 菜 
大きな空間の空(クウ)を背負つてる
温かい肉の塊寒い雨
ボールペン斜めに置かれ黙つてる
悪意なぞさらさらなくて抽象画
暗くなり己の顔の見えてきて
大きい人小さい人桜木町
コワレルトキガクル 

                 大 仙  熊谷 従子 
また逢う約束のコーヒーは濃いめがいい
畑じまい少し距離おいて鴉見ている
大根のぶどう漬食べ頃で冬の足音
紫陽花を花びんに立てて色の変化楽しむ
土竜(もぐら)もこもこ姿見せない畑の睨めっこ
手袋の十指でいただく焼芋の温み
晩秋のカーテンコールは武家屋敷の人力車

                 東 京  小早川すすむ 
新富士を光の線にしてまだ走る
下心山葵に溶かす鉄火丼
熱燗ゆららオリオンからの湯気
VHSノイズの奥を芭蕉の夢がかけ廻る
旅行には見えぬSAの家族
その手鏡にもう僕は映らない
二〇一七ページにそれと分かるしおり

                 川 根  小籔 幸子 
石蕗の花初冬の光集めて明るい軒先
山茶花満開縄跳び夢中の子らの赤い顔
柿鈴生りカラスは素通り
骨壷の姉亡夫と並び墓の底
いつの間にか冬野良猫の子二匹遊ぶ日だまり
すずめ電線に並ぶ鴉の群れ柿の実貪る
若返ると言う美容液に女心揺らぐ

                 東  京  さいとう こう 
海の訛り消えぬ一羽
てらてらうろこ雲の夜
隣人歌う帰る家がある
走る限り光るキオスク
近くて遠いおそろいの夢
「丸の内なのに安いんだぜ」何度も貴方
和からしに死んだ君と僕のざっくりとした責任

福 岡  清水 伸子 
すっといってしまった夕陽いつか晩秋
急の寒さ冬帽子あわてて出した
その香り甘いみかんお隣りから到来
ハイビスカス三年夏も冬も咲きつづき
寒風帰宅の足音三匹は玄関に並び
ためらい捨てて細々畑仕事春菊の芽

                  秋 田  菅原 瓔子 
夕陽に震える影太鼓ジャンプ
つぶやきにつぶやき寒さ増す
駅のおにぎり屋ほかほかします
殺風景な家並ほんわりタッチの雪積む
何を言っている冬波が言葉をさらう
海が荒れても微笑仏ある処
石蕗は吠えない犬と仲よしの門柱

                                 横須賀  杉本ゆきこ 
秋の夕暮れ少しちぎって手帳に挟む
女の横顔涙は耳まで弧を描く
茶色のはがき黄色のはがき踏みつけた
LEDの青色冷たく燃え盛る
秋映えのどす黒い本音
父の白髪と白髭は老いたライオン
お気に入りのアップリケは天使でした

                               武蔵村山  千田 光子 
ビニール袋で姉さんかぶり蜂避けつつ落葉掃く
午後三時腹の虫に聞くラーメン
雨続きコインランドリー大物乾かす人の群
お弁当うまい思わずお茶入れ替える
霜月雨浴衣のアベック通りすぎ
紅葉の中ぐるぐる回り句が出来たかと催促
銀杏人や車にふまれ形無く