海紅俳句 1

6月号の同人の方の句をアイウエオ順にア~サ行まで掲載します。
タ行からは2に掲載しています。

              浜 松   安達 千栄子
出来合いのおかず手に取るためらい少し
猫のいびき聞きながら陽だまりの読書
コロナなる新手の病連れていけ花びら
大丈夫だあじゃなかったね志村さん
たけのこ到来世の中とっくに春
こっそりタクシーのメーター上がる家まであと少し

              浜 松   渥美 ふみ
不穏なご時世で土筆の背が伸びない
嘘も混じったシャボン玉きらきら
高らかに吹こうラッパ水仙一列
浅蜊が旨い季節(とき)潮干狩中止の札立つ
蝶のように舞っても見たい豌豆しろい花
フェンス越し蔓桔梗ききょういろ広げ

              浜 松   渥美 ゆかり
お前も老いたか梅の実今年はめっきり減った
あと何年共に生きられるあでやか曙椿
芽が出た芽が出た春がいっぱい
黒椿と呼ぼうかこの赤い椿細い雨降る
コロナウイルス襲う桜は大きく手をひろげ
家建つらしい春の雨に濡れた木肌
眠気おそう春の雨は静か

                 東 京   石川  聡
哭きながら散る 哀韻を桜ちる(悼・志村けんさん)
無人販売カサブランカ固く閉じたまま
タクラマカンの風紋として眠不眠
朝の陽の淡く春の汗の浅黄いろ
レタスで包めるほど愛はミンチ
たらちねのちねの雫 母の春
春暖を餃子のひだへ畳む

              浜 松   伊藤 三枝
空も海も溶けあう青
橋に降り鯉が来て花びら分ける
お花見バスケットコロナの春を泣き
飛行機飛ばぬ空それはそれでさびしい
歯科医は花好き紙コップ今日は藤の絵
赤すぎる夕日メールしてみようか

              東 京   岩渕 幸弘
陽につつじのみてみて顔くらべ
やさしさに胡座かく脚になりたい
うねる夜泣きに月さまの光り舟
重ねた皺のいまここ
いのちなんざァ散るひとてまの足掻き
「ままのかお」がヤル気まんまん夢のなか
待てど暮らせど雨垂れのおと

              浜 松   大内 愛子
マネキン春の装い客足もない
風憎い帽子とばされ老いの息切れ
髪手櫛で直すサイドミラー
花瓶大きめあれもこれも生けて春の花
夜少し酔いムード歌謡口ずさむ

              東 京   大川 崇譜
なんなら冷凍してください
よもぎべつべつまわるすりこぎの上と下
筋力。片手で掴むシマダラカ
落とし穴善意はつもる脱出する
飛びたい月が朝ほど低かったら

              加 須   大迫 秀雪
花にうづもれハナアブを待つ少女
花バチに聞く黄菜国《きのなのくに》のものがたり
穀雨、母想ふ椿の子
鳥居三つ隔てれば杜の梟お守りと化す
古墳のまちで古墳黙って木を生やす
新人を励ましたくて仕方ない
捨て犬は未だ怯えているがコロと名付ける

              香 川   大西  節
コロナウイルスにおびえ雨に三ツ葉蕗を摘む
おとなり声がしない満天星濡らす雨
袖口ほころび春雷とおくにきく
昨日今日道の駅素通りゆきもち草真白
椿ぽとり落ち夜が笑っている
誰かの声がするいま目ざめたスイトピー
ベトナム研修生若い辛子菜《からしな》を漬ける

              氏 家   折原 義司
西行桜満ちて花びら散り初め
片栗の花ところどころ満開だ
手弁当三密充分あけて花見酒
コロナウイルス宇宙の果てへ飛んで行け
スーパームーン春の夜空をひとり占め
一葉桜重厚な花びら白い

              東 京   笠原 マヒト
どこかの子供川を指差して
薄い緑葉を染めだす
遠くに見える山に行っていた
日差しの下で伸びてみる
電柱並ぶ下り坂まっすぐ
鳩羽ばたく花は散っていた
日差し黒い鯉のったり

              東 京   加藤 晴正
嘘か春は
指先には青空売りの店
レタスはいつもおはようだ
新調メガネはあらばかり見る
持たない重さを振り返っても
コンビニコピーで今日も明日も
雨雨雨すとーんと棒になった。降った

                       福 岡   河合 さち
揺れる柿若葉は私の勇気に
午後の雨一人しらん一輪
自粛自粛に雲一つない空と桜
春なのに深呼吸出来ない私がいる
ウーバーイーツで孫とハンバーガーついて行こう
パンデミックロックダウンいっぱいイッパイ
手作りマスク貰った心和む春一時

              東 京   上塚 功子
緊急事態宣言おさない頃の孫の写真で和む
ありがたし妹の手作りマスクは紫陽花柄
コロナ禍深圳の息子と思いやりウイチャット
桜散りバリケード外されシャガ花盛り
たらの芽を天麩羅にコロナ自粛長い日々
春キャベツ新玉葱お気に入りスパゲッティー
紅ぼってり関山の花びら白鷺染める

               浜      空心菜
ジャガイモはサナトリウムの入口
鋼の車光となりて過ぎりけり
花束を後部座席へ放り投げ
黄水仙強烈な叫び声黄色
草の花その可憐さへ除草剤
花盛り角々のある暗さかな
婆ちゃんの腰巻も赤だつた

              川 根    小籔 幸子
夕暮れの花明かり見上げる顔みんな穏やか
新緑と山桜の装いは山のおもてなし
桜よろこぶ友一輪の花びらになった
また来年おひな様の箱そっと閉じ
川淵に一面花筏
手をかざし桜吹雪と遊ぶ子ら
コロナウイルス緊急事態そ知らぬふりの桜

               福 岡   清水 伸子
水仙の香り玄関から仏壇まで線香の細い煙
桜満開子供のいない公園で詠みつづける
今朝の暖かさチューリップ植えすぎた
庭の恵みアスパラ今朝のサラダに
桜散る市役所マスクで現況届
狸のような猫庭の一等地に居すわり
地球一周汚染草木はいつもどおり

                                   横須賀      杉本 ゆきこ
犬の重さあたたかさ私の日常
歌えない声も密める日曜日
芽吹きの色相環にゆるやか
あふれる音楽とあふれる絵
緑の季節ただ祈るだけ
思いきり呼吸をしたい海の公園
生きている鉛筆をナイフで削る

                                                  武蔵村山       千田 光子
長年の想いコロナでポイ
墓参り行けず夢に出て
兄の頭髪ウェーブ
各家鎖国状態
今は小心者でいよう
草木はいつもどおり希望たくす
人怪物を作り操られ歴史きざむ