海紅俳句 1

3月号の同人の方の句をアイウエオ順にア~サ行まで掲載します。タ行からは2に掲載しています。

            浜 松  安達千栄子
手帳書くこともなく一年過ぎた
昔の族が疾走する暮れの国道
クリスマス同級生の訃報届く
薄い三日月さてどんな句に
毛があっても猫は寒い大寒
住む人もない実家行く当てもない正月         

                                             浜 松  伊藤  三枝
息切らした坂見えた富士真っ白
初空をきりっと二本飛行機雲
目白の声に目を凝らす山茶花の垣
青い空に祈り七種に足りぬ粥いただく
葱畑他国語飛び交うティータイム
木木の芽動き始めた暖かな雨 

                                             東 京     岩渕 幸弘
発熱止まず真夜中海に浮かびおり
味覚ゼロ。ゆるく音の死んだ白の世界
真夜を織る信号赤の葬列
餅は四角く生まれクリーンな社会計画
生命吹きこむ達磨の目にも光
納豆糸をひく余韻こころは雪の里
からだをだいてだんごむしせかいきらい

               浜 松  大内 愛子
始まる一行日記初日の出から
呑み仲間久しく集う年始め
凍てつく月に合掌熱燗ののどごし
寂しさも自由もあって一人の暮らし
ワンパターンいつもの喫茶で待ってます

            東 京    大川 崇譜
煮込んでおかず後悔に形はない
輸入もの榊ニレイニハク
再再開発のまち黒いダウンのそぼろたち
この駅のメロディは初めて見た字幕付きの日本映画
しばらくぶり姉は同じキッチンスポンジ

              香 川   大西  節
正月土産満席の瀬戸「しおかぜ」に乗る
大根人参里芋丸くまあるく餡入り雑煮祝う
寺の大根炊き湯気の向う笑い声
屛風が浦大師産湯の井戸水満たし
女が綴る平安絵巻むらさき系譜
鐘楼再建鐘の音ひくく揺るがす
正月北の惨事山茶花散らすありったけ            

              東 京    上塚 功子
三日月と金星並ぶ未明の辰巳
元日の能登激震金沢の孫は上京してた
デコピン似の犬を目で追う冬の朝
暖房費節約重ね重ねて十二単
母似かな鏡の私に笑いかけてみる
枯れ蓮池に小石こっつん氷張っている
七草粥ひとくちごと春に染まる

                                                 福 岡   河合 さち
きっと再興悴む手に指す冬陽
阪神、東北、熊本、能登と今生きるもののなすべきこと
侘助桃色一輪みっけ今年も共に生きる
十人揃って初詣孫の成長に埋もれる
十人横並び二礼二拍手祈る被災地復興に
じっと合掌一人取り残される
飛梅も菜の花も和む心を阻む能登激震

                         横 浜   空 心   菜
人間が通りて影を曳いて行く
何もしない何もできない大晦日
寒空に大きなバッグかつぐ人
老眼鏡かけ直してる大晦日
何時もより挨拶したくなる三日かな
脳内のしんと静まる藁葺き家
ラーメン屋駅前通りの埃かな

                 川 根     小籔 幸子
能登地震何もかも知っている空はただ青く澄み
能登地震心痛む赤いシクラメン窓際に置く
やる事が無いと日なたぼっこ老婆の虚ろな目
災害と受験やるしか無いと高校生の目は輝いてる
ロウバイ一輪咲いた朝の香気
成人した孫の清々しい顔世界の平和を願う
ストーブから離れられない朝ひよどりのかん高い鳴き声

                    福 岡   清水 伸子

穏やかな元旦に裂けた大地よ母の故郷
津波引き泥だらけの重箱雪さらに降る
おにぎりに大根寿司そえられ被災者の朝
ふだんの幸せ一瞬にとぶ集落に氷雨
手編みの帽子持ち娘くる熊本地震思い起こし
バス停病院に行く頰に風つめたく
小さな葉牡丹植え秋田の友想う

                                                    逗 子   杉本 由紀子
チュンチュンと春を待つ嘴つきだす
ビターな味のチョコレートで気分変えて
通信泥棒にやられた友だち減った
月のお皿に乗せてみんなの美味しいご飯
きよとゆうとはさみチョキチョキ神様作る
パンの耳犬が欲しいとほえる
海はただ泣いていた 

                                                   東 京         千田 光子
元旦テレビ地震の凄さ目に刺さる
コタツでテレビ見てて悪いよう
雪ふるな天気予報はずれてよ
まだ噛める厚焼せんべいバリバリ
誰かが言ってた欲はないと私欲ばかり
米寿まだ憎まれ口たたけると賀状来る
もろもろの事考え消えていく

 

 4月号作品より

                浜 松  安達千栄子
朝一番おばさん群るチョコ売り場
訪仏とさせるなんて素敵な勘違い
クリスマスローズ始めました助言もいっぱい
下戸なのに金沢の地酒買う
おまけの二十九日何してやろか
おい寒いぞストーブ点けとくれ猫

                東 京  石川  聡
顎の裏に失意
ひーーーーはる
梅に白を問われる
庭師はんとし先を剪る
ハマの水路はる浅い濁り
雪泥 沈丁の花芽いまにも
渋谷駅濁流すり抜けるgrandma

                                                 浜 松  伊藤  三枝
凍てる風調整池の波突っ立つ
梅の一枝ほぐれる部屋の寒さ
霧除けの雀の声眠い春
窓いっぱいの黄色沿線の菜の花
FDA機体は苺色思わず両手あげる
春の風少し入れ朝の葱きざむ

                                                 東 京     岩渕 幸弘
カラーコーンに爆音躍るトー横ゲルニカ
このかなしみくるしみくやしみくるこないくるくるうかも
あごがちいさくはずれじいはずかしいじがおうと
じじじじぶんじらいをふめばぴんくのちだぽっぴー
てびょうしびょうでしにたいいのちのれいとうこかん
かんかんいのちのしゃだんきのまんなかでおどる
チョキで死にたいアハッ

                東 京    大川 崇譜
やじるし変換したら上に進め
シフォンケーキの弾力のここに限りの月
雪のとどまるタコ公園のタコの吸盤
ここにいます図鑑めくられることのない頁
溺れてく砂鉄のなかのNのため

                香 川    大西  節
我拝師山捨身ヶ岳仰ぐ荒涼
節分七ヵ所巡り風に施されおされ行く
霜解けて足元草の根ねむる道
池の水涸れ雀と遊ぶ連れづれ
陸軍十一師団面会の父と分かつ握飯友かたる
たどり着く西行庵ふかいねむり
霜朝のさんけいみち足音ふくらむ
 
                                                                  東 京     加藤 晴正
石鹸が決まった位置でずいぶん小さい
故人遠くなりバームクーヘンなど食べる
味と言って擦り切れジーンズ
指先からも不安
日がな一日数える物も無く
行き止まりの切なさがうつむいていた
雨空と青空の距離を歩いている

                東 京    上塚 功子
雪に埋もれる水仙の花立ち上がれ
銀世界マンションから子供ら飛び出し雪だるま
古株シクラメン冬陽エネルギー注入
きりたんぽ鍋煮えたところへセリの青
今朝二輪明日は何輪河津桜に寒さ戻る
葦の奥ウグイス初鳴き聞き逃さず
朝焼け小焼け映す池鴨の心は北へ

                福 岡     河合 さち
我家の裏金ヘソクリは可愛いものだ
季節外れは乱高下庭の芽吹きを掻き乱す
杏の蕾今年はひと月早く娘に写メする
なたね梅雨何もかもカラッといかない身も縮む
陽気に浮かれこぢんまりと部屋の模様替え
お雛さま飾り終え雨水となる
ポケットに侵入者綿毛フワフワ行方定まらず

                         川 根     小籔 幸子
見たことも無い鳥木の天辺に人集まり仰ぐ顔
白波立てた大海原ゆさりゆさり船旅
山の懐おいしい水と空気を頂き八十路坂登る
しんしん霜の朝山の水に目が覚めた
白い根っこは土を噛み青茎は天を突く葱の優等生
枯れ葉の下に福寿草の芽二つ三つ木漏れ日に光る
春は気紛れ繁みの中で鶯小さく囀る

                          福 岡     清水 伸子
冬晴れ空を見て誰もいない公園横ぎる
縁側陽だまり猫の領域に入る
キンカン柚子全部取る籠からこぼれ母娘童心
裏から取ってまた柚子ゆっくり湯につかり
若き日は瞬時一日みぞれの中に居る
梅が咲き米寿はまだまだ生きまっせ

                                                            逗 子     杉本由紀子
とんとんとん誰かのノック春のノック
沈丁花のラインのライン写真
いい香りしくらめんのんのんめらくし
点線を実線でなぞって生きていく
かすると的するか
男の背中に湿布塗る
イチゴの粒々を頬張る孫たち

                           東 京           千田 光子
風にノックされても水仙咲き
朝の公園散歩の犬達に頰がゆるむ
初雪降り近郊の老木負傷
お内裏様飾りこんにちは
前日より片付け出来ほっとする
靴下手袋相棒出ず
鉛筆握り頭かかえるのもうれし

 

5月号作品より
                        浜 松  安達千栄子
えいっと菜の花茹でる春まだ遠く
よその家の水仙うらやましいほどの大きさ
舞台は満開の吉原いよっ中村屋の声届け
こんな奴選んじゃったポスターの顔笑う
待ちわびる春への雨音

くそばばあになる野望まだ捨ててない

                  東 京  石川  聡
正直が人刺す 霙
喜多方堅雪かすする
いしきもらしはんびらき
黒百合なひとに叱られる
いえないほんね循環路線図
告白のソースべたべた絡みだす
ペット屋こねこねているを短い足しゃがむ 

                                                            浜 松  伊藤  三枝
ちぎれちぎれて雲青い空へ吸われ
桃の花生か優しい時にいる
空の隅まで晴れ陽だまりの甘酒
白蓮の空その空の青いこと
墓洗う春の水温かく鳥の声
春の風荒れて風紋のニュースとなる

                     浜 松  大内 愛子

父さん前だっこ子はすやすや
春風を背に行きかう人の会釈
むかいの子今朝歯が一本ぬけている
しっとりと鰤大根の味のよさ
小草も生きづく土手や岸辺に草青く
食事会さそわれ八十路の心ブギウギ 

                  東 京     大川 崇譜
春は特急の羽やすめ
無意識意識するうんと渋い茶
しあわせの残りマキタのブロワー
噛みしめた朝のだれもふまぬゆき
ハルチカシジャック・レモン怒ってる
同じ月がでるという行ったことない県境
ぶどう畑の縁側のぶどう由来のサイコロステーキ

               香 川   大西  節
倍子一連ゆるむ浅い春
県境を越えて来る汽笛とぎれがち
山裾の雪解けゆるい風もつれ
こんな裏みちがあった蕗のとうかおを上げる
水仙目ざめたばかり水にはじける
五色散椿日々白を重ねる
小米花散らす少しおくれた言葉

                防 府  岡原 舎利
暖かき朝の蚊のあえなき死なり
そんな生活しててボケない君かな
アラレちゃんもまる子ちゃんも旅立ったよ梅の花
春が来る生きることが苦しみだけになり
枯れたアジサイに小さな芽
小鳥二羽カメラを出せば去りぬ
古木に春陽当たりじっと蛇の子

                  東 京    加藤 晴正
声も無い路地で自転車を磨く
母だった部屋乗せて寂しい地球は回る
おはようの子供たち卒業式旗揺れる
青広がって多摩川左岸からの海
部屋中にあふれだす夕焼け炭酸水飲む
青い空充填し寂しさのど真ん中打ち抜く
赤い傘青い傘雨の歩幅で歩く

                   東 京   上塚 功子
菜の花投げ入れやっぱり益子焼にしよう
チュチュっとさえずり見つけた翡翠色
顔をくっつけ沈丁花吸い込む朝だ
春よ春よユーミン身体駆け巡る
地中ぬくぬく土筆の潜望鏡
スポーツ万能の義弟逝く冬空に富士の山
今朝のルーティン終え雪柳満開

                   福 岡   河合 さち
杏の蕾に雨水の玉観てるキラキラポトリ
喪服にブラシ掛けLINEに盛りとムスカリとクリスマスローズ
富士山てっぺんに雲かかる手を合わせたくなる
支えを亡くした義妹がフラッシュバックする私の十三年
春のイタズラに煽られる孫も満開の辛夷も
卒園卒業控え六歳年の差兄に思いの丈を聞く
春の引っ越しはどこでもドアが欲しい                          
                   川 根     小籔 幸子
透明な雨ガッパ着る春の雨
囀りが囀りを追う日向かな
コーヒーを三杯飲んだ兜太の忌
菜の花を両手でつつむ暖かさ
腹の出た私の体さくら餅
喪服着た野鳩が一羽春の朝
坐る場所決めるきつかけ桃の花

                   福 岡  清水 伸子
女医さんとの別れ山茶花白く散り初め
凍て空に欲ばらず今日一日のこと祈り
大雨池にサギ一羽流れ込む水に立ち
近所の畑大根葉青々と暖冬
水仙ゆれる聞こえるよう母の能登の歌
逗 子  杉本由紀子
夢の下書き点線で描く
雨垂れは知っている悲喜こもごも
紫木蓮花びらモザイク
情熱を売りさばいてしまったパステルトーンの春はなくグレートーン三月雨は少しだけ冷たく優しい
ハイボールのしゅっはしゅっはに溶ける切なさ
                      東 京        千田 光子
公園の松の木切り刻まれ鳥空舞う
蜜柑の木食いちらされ戸惑うもバスを待つ
買物はリュック味噌醤油腰にくる
兄は八十のおじいさんだと自覚なく
梅咲き風に舞い桜を待つ
雨ばかり桜が水を欲すのか
家事買物医者三ツ編み生活