海紅俳句 1

月号の同人の方の句をアイウエオ順に今回はア~サ行まで掲載します。
   タ行からは2に掲載しています。 

              浜 松         安達千栄子
眠れない夜ざわざわ風
鳥なきだした眠れなかった夜が終わる
風湿り気を連れて来たつばめ飛ぶ
美術館は葉桜おまけに極上のランチ
エイッと半袖まっすぐに夏

                 浜 松       渥美 ふみ
べらぼうな値がついて新茶セリ市の熱気
凧は十畳この日燃えたぎる男の意地(浜松祭二)
直虎の凧も揚がった浜松いま旬です
爪先とがった靴地下道にリズミカルな音
連休終わる疲れたつつじの暑苦しい色
思わせぶりな蕾花菖蒲あすはきっと咲く
通りすがり鉢植え苺の熟れてゆく様

              浜 松        渥美ゆかり
いい夢って何それは言えません若葉の朝
街は青葉時の流れ車の流れ
庭の花競う退院の便りは受話器から
○×△ペチャクチャ春は女の立ち話
朝昼夜初夏の風くる一人きりの平穏
友フランスに旅立った日のカレーぴり辛
しばらく会えなかった鯛釣り草一輪で迎えよう

                 東 京           石川     聡
春をザン斬(ざ)降り
夏日が春を磔(はりつ)ける
刻の風に逆らう舵のない舟
新緑まんなか口笛ぽえぽえ
通勤氾濫故障改札技師孤島
夢は透明な船です明け方は帆影
牛すぐ喰いそう夏前なづなはこべら

                          相模原        院瀬見美登里
来年も咲いてねさくら草とゆびきり
喋り笑い句の友と日長のデンワ
草をぬく小さい庭の今朝もともだち

            東 京       伊藤    郁子
明日葉の味に幸せがのって
師のいない故郷ちょっと遠く桜
わが家のみずみずしい柿の葉鳩のつがいの住処
散りさくらゴミ袋に詰められ見る人もなく
こどもの日子供がいない道歩いてる
黒土の畑が消えて駐車場に花吹雪
はな韮抜かれてわびしい石畳

            浜 松        伊藤  三枝
お化粧の手を止める鶯近くにいるらしい
治療すみ空木の白い雨に会う
法被が闊歩祭りの顔は別なるや
はつ夏の空からみかんの花の甘い風
桜の実さわさわ吹かれ待つのもいい
初夏の街見下ろし本日聞き役
友病む白牡丹の話には触れずおこう

            浜 松     大内   愛子
春はどこへ行ったか真夏気候
夫(つま)病む日々すべての予定は消えてしまった
サンダルひとつ新調春の色
散らかした部屋にも一輪額紫陽花
風柿の葉さらさらと見舞の道

            東 京          大川 崇譜
とうとう額ベニスに死す
ただ守ればよかったマスキングテープの誤解
酸っぱい思いに掛布団こんな寿司な世の中
欠陥のない近道はないと分かった影の長い時間帯
五月じゅんぐり上大岡のおの字の間
まだできるんだろか地球半周の一人旅
小天使なわたしの具なしオムライス

            香 川    大西  節
朝獲れの地魚小海老港まちはじける
さぬきうどんにさそわれ走る竹のあき
雨に手間取り草に声あげる
芝桜はみ出す水源地のそら
みんな忘れたげんげ田寝転んだ空
金毘羅歌舞伎楽おそい筍芽吹き
躑躅祭りの彩り映す足なえ

                                       防 府       岡原 舎利
キジバト夫婦玄関でじっと待つ
満月煌々バイクを止める
林道のはてまで来て昼餉をしたためる
いつからか雀しばなく家である
カラスの挨拶空高く
気が付けばクレーマーの婆さんもういない
川面に鳥いて風の音かすかに

                   氏 家    折原 義司
さんまる遺跡は栗を植え食べ柱にすごい
初夏の風が強い竜飛崎から北海道見る
五能線大きな夕陽沈む日本海
牡丹桜咲く弘前城歴史の詰る石垣修復
岩木山雪どけ帽子で登場
緑の風山林に行方不明の友見舞う
換気扇の椋鳥は騒がしい巣立ち近いか

                      福 岡    河合 さち
運動会弁当ばあばの卵焼き一役
赤かて白かて六十年前も今も土埃まう
駈けて転んでそれでも駈けてこれからも
青青一面大葉に雨音ぴちっぴちっ一人
五月初日巧い鶯一声後のコーヒー
沖縄は梅雨入りそろそろジワジワ蔓延る
夜に五月雨お悔やみ状と涙

             足 柄           河合   禎
燕の巣郵便局玄関に局長さん苦笑い
庭いっぱいの小判草吉兆なのかな
上のテッセン下からオダマキ競う紫の艶
久しぶり豆餅の味なつかし故郷は今如何に
新緑模様のドレスまとった箱根山これから

                                     大 阪           笠原マヒト
今日も日が暮れる日曜日
それにしてもあの歌声はどこからか
涼しい風と思ったら笑い声
風鈴なんてなくて当たり前の街に住む
窓の外に夏がある
捌かれたサバと目を合わす
夕涼みと蚊は同じ枠の中にある
             国分寺         梶原   由紀
ブラウス束の間の春を漂白
葉桜くっきりアイスコーヒー濃く出る
神宮のつばめは自転車に乗るらしい
空に出ちまった蔓ひとまわり
頭痛の日の仔犬やさしい
出遅れもいるが撮り鉄戦隊
五月の蕾の内のみゃくはく
                               東 京      上塚 功子
診察予約日忘れるなんて雨の杜若
頭で句作っている宵待草の眼差し
夫婦してお腹抱えて笑い心太
言いわけばかり浮かぶ日髪染める
早すぎる夏に気の早い衣替え
驚くほど大球なシロツメクサに出会う
五つめの青梅はほっぺうすもも

                               大 仙       熊谷   従子
赤いナデシコの鉢を母の座に据える
通院鞄にしのばせ「海紅誌」と診察を待つ
物の芽のやわらかな色地をもたぐ
チューリップの花びらを夕べの風が浚(さら)った
水ぬるむかたくりの群生恥らいの花
折づると飛ばす桜吹ぶき何処まで
父を送った日の今も回る風車

              東 京          小早川すすむ
酔客をぶん殴る紅椿
曇天を掘り起こしては過去を摘む
立ち喰いのうどん艶めく旅でもない癖に
ひなたねこのあくびから春
ネオンの棘分け入って今日の宿
真夜中のシーツ月の轍
春の線路は夏よりも長い

               横 浜           空   心   菜
よたよた歩く白い砕石の上
病院の個人情報叫び声
時には誉めて勇気なくなる
汚れたティッシュが埋め尽くす
すべてが終る五秒前の少女
現実のささくれ痛くて本気になる
足の裏につぼがある裏口を開ける

                                    見 附     紺   良造
これはこれは新入生の土筆の坊やか
蕗の薹吹けば飛ぶよう惚けて吹かれ
蛙ケロケロ応えてケロケロ闇をかき混ぜ
転校生も混じって葱坊主くび振る
ホトトギス声整えて三声鳴いたよ
向こう三軒負けず劣らず連翹燃えた
照る日曇る日こぶし盛りの無風の日

              東 京        さいとうこう
躑躅黙す秘密結社
ネオン灯まるく白昼
メーター上がりきる春陽
獣も消えた墓地線香一本
小舟一葉月一片こいのぼり
あぜ道だったね春風めくる
さびしい、いいえ、わびしい

                             福 岡     清水 伸子
静かで美しい街福岡を誉めてくれたパリジェンヌ
地震で根が切れて不作です熊本の筍
ままにならない事ばかりキジ鳩が見ている
不意の入院がんばれと桜咲き出す
カーテン開ける病院の朝海紅にお日さま
山頭火日記楽しくてやがて淋し春らんまん

                              秋 田    菅原 瓔子
迷子になる言葉京都の街角
葵の葉飾る王朝行列目の前ゆく
人垣の邦人異邦人手をつないでる
押しているボタン次は四条河原町
通学列車の過去に今乗る煙吐く
京都の海月に会えなかった私
枝葉勢い木が衰える季

              横須賀   杉本ゆきこ
子どもの日 九十歳の父と筍食べた
昼顔ぽかんと口開けて空見上げる
ツツジ一斉にどぎつい色売ります
昔誰か不幸にした話雲が笑う
サバイハルの絞りたてジュース
母の似顔絵はいつも涙色です
薔薇の香り自由の扉開ける