海紅俳句 1

四月号の同人の方の句をアイウエオ順に今回はア~サ行まで掲載します。
   タ行からは2に掲載しています。 

            浜 松      安達千栄子
豆まき忘れた鬼笑う夜
雪ふんわり舞った街中空を見上げる
河津桜咲くここから始まる春
虹に向って車の群れ走る一筋の道
猫ゆれる電線ながめ今の風は春一番

                                            浜 松   渥美 ふみ
スポッと抜いた大根そのまま持たせてくれて
殆ど病院前で降りる冬の砂丘行きです
保証人の印白い病院に白く舞うもの
落葉脆い音してずっと先の立春はる
ポインセチアの薄い埃春は行きつ戻りつ
コートの長さ気になるそんな二月のある日

           東 京      石川  聡
背けろ夢がささやく
胸奥いつも血の池地獄
うそ月煌々楽な道へ曲がるこうこう
クリーニング屋さん春色配達だ
相乗りで後ろめたさの河わたる
冷え込みに襟立て景気薄暗い息を吐く
三寒四温小ぬか雨手早く本心折りたたむ
相模原院瀬見美登里
すべてが電光掲示膝の上のコート(米寿健診三)
パソコン叩く医師の白衣に応える
梅が咲いたしっかり見た帰りみち

           東 京      伊藤 郁子
川沿いに吹く風私を冷たく追い越す
新芽そろそろ私の庭
冬日目を閉じれば故人の姿ありありと(友の夫一週間前に死す)
君に声なしただ哀しみの二月も寒く
乱れ冬人の命のみだれを誘う
心の孤独電話の向こうから細く遠く山茶花の庭
鏡の中の自分老いを知らせ笑う

           浜 松      伊藤 三枝
学生の街雪降る銭湯の煙
藪椿の赤が重いくもり空
紅梅匂う優しい人でありたい
菜の花の色で決まり春です
毛糸玉ころころ日向に軽い指先
貝閉じるごと眠る屈託なき日

           鹿 沼      岩瀬 憲一
枯木立吹き抜けた風のきびしさ
襟立てた影長くして月氷る
セピア色の写真が謳う「初恋」
難聴の耳にも春の足音
春の訪れの水がさらさら

           浜 松      大内 愛子
交差点つむじ風に行きかう人の波
福もなし鬼もなし一人豆まく
夫留守寂しさもあり自由あって紅梅咲く
持ち家にのほほんと余生プランター植えかえる
初詣祈る前からこけている
主人留守紅梅白梅きばって咲く

           東 京      大川 崇譜
パシフィックオーシャン長者ヶ崎のザラメ
長者ヶ崎弁当のしらす富士向かう
車止めごとつりざお半径の春
いくつあっても猫たち陽だまりここがいい
どうしてギターに生まれなかった電信柱
パピコ二つに割れない確率
春一番かあさんさがす音

            香 川     大西  節
百合鴎立ち尽くす波打つ最前列
寒波打ち寄せて誰も言わない小島
小みちを挟む通学路声が凍え
雪みち子供が息ひそめついて来る
紙漉き芯から冷える白い朝
ひび割れの餅を焼く今朝の空
伊予柑のあつい皮をむく誰も来ない

             防 府     岡原 舎利
まず心だけ今から旅に出る
カラスが三羽ご機嫌伺に来た
すり寄ってくるネコがいてありがたい
わたし一人にカレーの残りが多すぎる
寒い庭に出る口実の一服
裏庭でハトが食べられた
庭でも掃除しろと息子に言われ

             氏 家      折原 義司
夕餉にいつも一緒元気の元酒よお前は
人と知り合い深くなる酒よお前のお蔭
唄う話す素敵な時つくる酒と笑う
歴史の浪漫に浸るのは酒のお蔭
酒よお前はストレスを癒してくれる
俳句入る時今続いているのは酒の縁
酒よ飲めない俺を怒れ励ませ静かに眠る

                                              福 岡      河合 さち
卒園までの限定家族この冬の温もり
太宰府絵馬飛び梅韓国人も満開
こし餡桜餅葉を匂う孫
庭梅一輪一輪殖える長生きの秘訣
卒園練習孫いきなり唄う君が代
まだまだ割高そら豆の塩加減
夏注文この冬届いたランドセル黒にステッチ

              足 柄      河合   禎
庭の豆鳩が片付けている立春
義理チョコ一つだけそんなものか
桜祭り繰り上げたら雪がきた
梅を散らし桜ゆすって春一番
春を待たずに去った友淋しい

              大 阪      笠原マヒト
円い月冷えた足先で歩く
そこを通ったら工事は終わっていた
ポテトフライを勧める知人は遠慮がち
雲が増えた大阪から京都
充電している横も充電中
夜自動販売機ポツン
冷蔵庫モーターの音で時計見る

              国分寺            梶原 由紀
少女の回覧板はチョコレートでしょう
つぼみも鳥も満載して待っています
点字ブロックイエローまっすぐ立春
四月並みの陽気って川は昼寝してる
まだ裸木まひるまに雲がない
立漕ぎのミューズが満開
仁義なき女でしてチョコレート丸かじり

            東 京     上塚 功子
鳴門金時千葉の愛娘か芋に迷う
柳のむちに芽吹きあり
鴨のあのそぶり旅立ちの準備らしい
河津桜に番のメジロと鵯かわりばんこ
飛び立ちと着水時の鴨かっこいい
不忍池にカンムリカイツブリすぐ鳥図鑑
暴れん坊春一番を冬将軍お縄

                                                大 仙   熊谷 従子
背なのリュックへ詰める春の夢大きい
雪祭り紙風船のメッセージあなたへ届け
カレーライスに甘酒入れる健康食品に嵌まり
嬉しい事にも涙が出るんです、八十路
雪道の歩巾が滑るちどり足、いそがずに
雪消しの風ポケットの目薬を確かめる
夢を畳んで遊園地、雪の結晶にうもれて

             川 根   小籔 幸子
立春をひたすら走り抜け猫の恋
里芋洗う日だまり猫寝そべってる
とんび輪をかく空に虹渡る
杉の葉一面の山道を行く揺れる木洩れ日

                                                 鹿 沼   小山 君子
凍る空会話は途切れカレーうどん
何から話をしよう見舞にくる甥二人に
立春目覚めのベルが鳴る床
病院にすれちがう子連れの親の香水
病に耐える夫見守るだけのきさらぎ

                                                  鹿   沼          小山   智庸
裏街小道人住む弥生の風
己を叱咜し書いた青いままのプラン
苺にたっぷり蜂蜜病いからの甘党
山頭火ラーメンに感じる亡父の体臭
梅一枝日だまりの窓へかざす
るすを預り福寿草散歩の足を止める
蝋梅のあふれるだだっぴろい長屋門

                                                  見   附           紺   良造
如月の田圃に群れを鼓舞する鴉いる
笹はしゃべり松は無言で牡丹雪を浴び
家々を包んで哀しいほど白い雪降る
降り続く雪の合間に雀がはしゃぎ
雪原を画布にして電線の影這う
大雪の奈落に灯して三軒の暮らし
山野の添景になる寒九の雨を待つ

                                                   東   京          西藤   広太
ふと父映る職場の洗面所
ふいに目が覚めまた眠る日々
死んだ野菜ばかり東京三年目
冬空は書割シリウスのわざとらしさ
赤ちょうちん揺れる一人ふたりワタシ
ふと振り返る電信柱ぽつぽつ灯る暮れる冬
始まりの朝チクタクチクタク加速度的リズム

               福 岡    清水 伸子
明るい春の訪れを待っている熊本
冷え込んで一気に町の牡蠣小屋活気
冬の庭一廻り水仙匂い赤い椿
雪とけた池鳰がもぐったり水面を走ったり
梅に目白数羽日脚も伸びて
飼って上げよう大ケガ子猫足一本切断し
三本足になった子猫窓から初雪見てる

             秋 田   菅原 瓔子
すき間なく雪の綴る空に光差す時
火を振るかまくらの元気テレビに貰う
基地騒音のよう吹雪が過ぎて
この町の吐息が春の雪になり
花飾られた顔で冷たくなってる友
雪洞にあの子のメルヘン灯す
話し方も忙しく春行ったり来たり

             横須賀   杉本ゆきこ
捨てられた子スマホの温もり
波もいやいやしている
LP レコード一枚分の愛でした
チョコレート全部とかしてしまえ
きさらぎ月は大きく丸く全てを暴く
上手くいかない口を尖らす水仙花

             武蔵村山  千田 光子
雪将軍国内巡りもほどほどに
野ら猫二ひきゆの字で寒さしのぐ
ツイッター良きも悪くも止めどなし
梅紅さし足もとにはこべ春が来た
窓開け朝風ゆるく深呼吸一つ
ジャンケンポン負けたら皿洗い
編みかけのセーター解く知恵の輪のごとく苦戦