海紅俳句 1

号月号の同人の方の句をアイウエオ順に今回はア~サ行まで掲載します。
   タ行からは2に掲載しています。

                浜 松   安達 千栄子
春の野菜はにがみばしる目をさませ私
入学式の前撮り満開の桜もピッカピカ
祭のラッパ入部したての音をたて
散ってしまった夜桜めぐり今日で終わる
気合を入れてピンクのマニュキアをぬる
夜の雨ふる少しだけのため息

                浜 松  渥美ゆかり
春の余裕は湖のたゆたう浪
雨が止む前に眠ろういい夢みよう
ちょこっと見えた湖が坂を下って広がった
古樹二本いつからみている湖の色
血圧グラフ春の波
貴方はコーヒー私も同じでと湖の見える窓
のんびり畑仕事の人だけの近道を帰る

                東 京  石川  聡
枝ゆれずさくら降り霞む
藤の棚染まり短い房がゆれ
グラグラ鍋で白濁する誤解
パステルのタイきゅきゅっと春を通す
春爛々(らんらん)夜風に男女の生臭さ
エスカレータ拭く人じっと春のゆうぐれ
はなみずきの白ほほえめば淋しい女(ひと)だった

                相模原  院瀬見美登里
タンポポ二本今日のおみやげ
丹沢山塊雪を脱ぎましたお早う
横浜のお菓子ですヨお仏壇の鐘

                秋 田  伊藤 角子
春風の広場フリスビー追う小犬
ふきのとう庭の春が始まる
ペンギンの切手南極からのはがき届く
百円コーヒー高齢者の話し弾んでいる
畳の色忘れていた青畳
入退院繰り返して桜前線まだ

                浜 松   伊藤 三枝
まだ三月です紫花菜うかれすぎ
桜を歩く何処かでテニスのラリーの音
昔の話になってしまう花吹雪
雨が本降り埃っぽい匂い消し
お月さんは半欠け桜は散った
春がダッシュ待ったなしの花水木
柿若葉が影を濃くし日傘の人

                浜 松   大内 愛子
夜桜満開すき間からの月明り
新一年生の列帰る先生は信号まで
何にか買おうとしている朝市の会話
蕗を煮る家中香り満ち足りている
痛む肩かかえ庭に鉄線の花咲く
いつもよりお尻が軽くなる花便り

                東 京  大川 崇譜
牛の白濁きみの返事は嘘になる
しましまの魚再開発ながめたりかくれたり
春横なぐり安くなったキャベツの重さ
世界白く収まり新しい名刺
たんぽぽはツクシになるって祖母の嘘
メニュー夏ヘルベチカ
七転び八起きの期待二転三転

                加 須  大迫 秀雪
寝起きの顔のまんまで春だ
水筒弁当なんもかんもほころぶ
さくらうぐいすうとうとうらら
ふき野蒜(のびる)アスパラのびる空を見上げる
岩に白菜めり込ますキミの頭を撫でる
ボルトぎゅうっと声も出ぬほど
犬なでてなでてじんわり溶かす

                香 川  大西  節
海風とどく備前塩倉拜領雛
瀬戸の架橋はるかに飯野山師の碑に立つ
蕗の薹軒下でうなずく雛の客
遠来の客を見送り土に種芋を置く
孫たちみんな帰る明日は雨になりそう
美作路雨となり山つヽじ先をいそぐ
葉桜となり湯のさと川幅につぶやく

                防 府  岡原 舎利
玄関を出たらスズメが一列に並んで待っていた
介護で籠り心だけ林道を駆け巡る
春に病んで花の散るを気づかず
庭の隅キジバトはいつも静かにえさを探している
夢の中に生き生きした自分がいた
河川敷デビューし老人を避けて歩く

                氏 家  折原 義司
夜桜ライトアップ妖精ぽつり
腕の浅い傷で不便パラリンピックは凄い
ミヤマキリシマ真っ赤に咲き自己主張
北へ満開の桜並木に大満足
桜の絨毯踏み上下見て歩く

                 福 岡  河合 さち
寝たきり母は私を見て連呼汗ばむ日
ミキサー食を舐めてみる母は三口で首を振る
腕となく腰となく摩って眠る母を見て帰る
母のこと引き摺り博多駅の雑踏に紛れ込む
四月バースデー庭の隅の芍薬今年も祝ってくれる
掘りたて筍三本と糠とボーンと植木屋さん
生後三か月オッパイ満腹動画に釘付け

                足 柄   河合  禎
ホウチャクソウ静かに気位高く
勢いある雑草これも青春
走りまわるランドセル色とりどり
足柄に咲く花水木ふるさとを知るや
春はいずこへ卯月半ばに

                国分寺   梶原 由紀
簡単にウニがいる
今日も春がエンスト
目蓋のおぼろを降りる
さくらさくら素肌を夜に放つ
けだるいチュッパチャプス回しゆく午睡
物識りね燃えるゴミなら木曜だけど
特快新宿まで前のめり夏

                東 京   笠原マヒト
夜に降り出した雨階段を流れる
静かな寺の門灯り射す
星が見えるが小銭ない
強風に動かない月
ひとりで夜中
寝床に入って夢がない
何もない今日を振り返らない

                東 京  上塚 功子
落花水鉢に浮かべお花見
いぬふぐり空色の花束にしたい
束の間散らされる桜の悔しさ
満月と桜のデュエットきこえる
土筆ぐんぐん春さっさ通り過ぎる
チイチイかわせみ鳴く声追っかける
上野花見の宴北斎が画くとすれば

                 東 京  木内   縉
春闇よりも深く黒猫
からっぽの空亀が鳴く
散る桜イタリア車めくれるスカート
いつかもらった置物を捨てる
しゃぼん玉ぼくの前で消えた
※の字のとれかかりつつある米屋

                大 仙  熊谷 従子
雪消えの土竜(もぐら)のトンネル主は何処
コーヒーのミルクかきまぜ春霞
伐採の杉の木ドスンと花粉舞う
花便りここまで来たのに戻り雪
転勤の花束抱いて息子来る
思い出は小さく畳む貴重品
かたくりの群生じゅうたん染めあげる

                川 根  小籔  幸子
山霧晴れて新緑の波は動く
ファッションに迷う鏡の前どこやら鶯鳴く
昔母と手を繋いで歩いた桜道
フキ.ワラビみんな出てきて春の食卓
風若葉に誘われ人間ドック受ける勇気
川霧の天にすいあがる瞬間体も軽く
部屋に漂う線香のかおり一日の始まり

                                     横 浜   空 心 菜
とにかくと時計が動く春の朝
ペン先の影散る桜
トラックの運転席の桜かな
その感情に壊されてゐる人がゐる
春の晴おしゃれな人の右の肩
指に付く修正液の白さかな
花びらは静かにそこに落ちてゐる

                東 京   小早川 すすむ
雪解けが声をあげて村を割る
冬に付け火して春霞
知らぬ街 餃子は同じ味
ハッピーセットとアンハッピーな頬杖
春の陽とどめる野良猫の文鎮
小春が街の影を殺す
削った夜から見知らぬ君の顔

                東 京   さいとうこう
手編みの糸からスッピンの春
つくしゆれている単線
赤いチューリップ孤独の声は老婆
忘れてしまいそうつつじからサイレンの音
インターチェンジ桜カーブ眼前
花のふえゆく流れゆく目黒川
スタンバイしにStand by Sea

                秋 田   菅原 瓔子
さくら咲き昭和のつづき歩いてる
春が来たショウトシテイに母お泊まり
夫の春は耕すこと芋を植えること
鰈を煮る味が薄いといつものクレーム
家族葬こじんまりが寂しくさせて今風
椿の大輪咲くまで待つ窓ごしの長い日々
大量に減る人のかずに残り花を見つめる

                村山市   千田 光子
我が家にゆっくりと春
水仙足元で顔上げる
花の盛りリュック背おい図書館へ
夕日にさようなら桜がなびく
ウグイス鳴く人ストップモーション
炬燵でうとうとハエが来て起す
菜の花摘みに来て蒲公英に見いる