海紅俳句 1

号月号の同人の方の句をアイウエオ順に今回はア~サ行まで掲載します。
   タ行からは2に掲載しています。

               浜 松  安達 千栄子
お中元のついでに父の日の広告
飛行機月夜を渡る行先はあした
日本中のナマズ様今しばらくお静かに
満員電車同じ顔した人達が群れ
半夏生庭のすみ母からのおすそ分け
ちぃちゃんって呼び合うのちょっと気後れ

               浜 松  渥美 ふみ
雨は何色海の鳥居赤を濃くし
梅雨明けを知っていた蝉
たぶん睨んでる相性悪い犬と私の距離
梅雨の月しぼんだ夢のひとつふたつ
メダカ死んだ日のいちにちを持て余し
爪楊枝ほどの蜥蜴ひとりで生きている
蝉をだまらせ廃品回収車の音量

               浜 松  渥美ゆかり
病二人で闘う幸せも悲しくも
人のやさしさ素直に受けます梅雨晴間
閉め忘れた雨戸しめ真夜中の星を見た
梅雨にじめじめした昔といる
色あせた古い手紙捨て切れず又降り出した
踏切りの警報機鳴り終ってもうすぐ目的地
終活捨てる事ばかり考え梅雨真っただ中

               東 京  石川  聡
焦げた影とあるく
炎天の顔みな白と黒
あめんぼう久遠の鈴の波紋
いちにち存(ながら)えたのどへ泡沫(うたかた)
くろもじで斬る水ようかん恣(ほしいまま) 
老いた金魚ほころびながら翻(ひるがえ)る
いつからか息止める癖いまからヒトに会う

               相模原 院瀬見美登里
ボトルの水を飲む今年の夏きぶん
二十本の爪を切り風鈴なっている
父あれば「コラーッ」ラッパ飲み上手くなる

               秋 田  伊藤 角子
新幹線の旅小さな集落が点在しそれぞれの墓所
人になれた雀が飛んでくる青葉のテーブル
もみじの枝に小さな蜂の巣親蜂動いている
中学生美術展の案内届く真夏日
いただいたさやえんどうとりあえず塩茹で

               浜 松  伊藤 三枝
アガパンサスは気まま雨の中の花火
陰地で一息藪茗荷の花の風
七夕の空は空っぽ天の川も見えず
猛暑に挑戦ハナカンナの赤
カレーはより辛く我が家の夏

               浜 松  大内 愛子
庭に穴ぼこ蝉始末せずとび去った
苦手の人が来た帽子深めですれ違う
田担う人減りつつも稲は青々と広がう
ほていさん心ほっこり床の間で
ついに買いました私の手首の文字盤キラキラ
はっぴきてひと役かいます夏祭り
主施設に入ったまま柿の木放置されている

               東 京  大川 崇譜
この夏に影のばす雲の翼開長
寝苦しさはレタスの八分割
終わっていく平成それからエルドラド(回転木馬)
肌掛けうすくガーはゆるりターンする
水槽にからだあわせる魚の知れた高
イギリス英語四隅四両めの魔法陣
ふかいふかい分母不明の熱帯夜

               加 須  大迫 秀雪
お獅子脱げば饒舌
冷やかしに来て手伝わされている
テリブルな蚊の群れバスはまだか
脈打つ度に揺れる♂♀(野花)よ
お洒落してはにかむトマトも熟す
酒を注ぎそそのかすその貧乏ゆすりのたが外す
私は私の旋律で今宵の月を讃えます(牛蛙より)

               香 川  大西  節
あじさい祭りの後列に繋がる
今年竹すくすく新湯あふれる
立葵のぼる蟻一匹の一方通行
雨にはぐれた遍路西行庵叩く
枇杷の実のうぶげ晴間つつむ
葱素直に伸び梅雨中休み
蛙軽くのった葉裏雨ひとやすみ

               防 府  岡原 舎利
傘を開くと貼りついたカタツムリ
ときどき干上がる川に魚が泳ぐ
豪雨ぞろぞろ出てくる嫌味な顔
この庭は花がないが蟹がいる
茶色いクモが湿気た座敷に逃げ込んだ
虫の良いことばかり願って初夏や聖天様
一花咲く前に根こそぎ抜いた

                 氏 家  折原 義司
蛍つぎつぎ乱舞川下へ
猛暑のなか草刈り汗出っぱなし
猛暑日つづくと食欲減退酒は・・
不思議な魔法の美術館にのめり込む
魔法館見て触れて光りと遊ぶ

                  福 岡  河合 さち
連日連夜命に係わる危機の文字
猛暑に続く猛暑大中小と水筒フル出番
38度超え逃げ場なく狂った蝉
今夏ほど猛暑と命繋ぐ水
七七忌和気あいあいとは亡き母の意
孫と首痛くなるド迫力花火にはしゃぐ
一人ぽっちでなくなる私の夏休み

               足 柄  河合  禎
鬼百合の朱夏を演出してる
役割終えて半夏生ひっそり
猛暑言い訳にエアコンとテレビと終日
丑の日に間に合った鰻ラッキー
越から地酒杜氏だった祖父を思う

               国分寺  梶原 由紀
くちなしだけに教えよう
地中に静脈があるよホタル
にんげんとめどなく夏の醜い河を
あけすけなヒールが夏を殺しにきた
腐敗公園の傘がしずか
夢で死んでいた冷房車
憎しみめくるカンナ天に近づく

               東 京  笠原 マヒト
つぶれた蛙雨に濡れる
雨、、、道祖神じっと
鳴っていない鐘ぶら下がる
日が射すが寝ている
はじかれた石ころ転がる
蒲焼きのにおいを通り過ぎる
日に焼けた道路蟻が列

                 東 京  上塚 功子
長電話中出かける夫へアイコンタクト
酷暑続き夕餉はあり合わせでいい
アオスジアゲハ猛暑を浮遊
朝顔市と鬼灯市遣り過ごし心残り
木肌一皮むいて鈴懸お洒落する
蓮華満つ地に転がる蝉憐れ  
和太鼓背負い飛び跳ねる若者たち夏祭り

                  東 京  木内  縉
七月の灯台真っ白に輝く
喪服の人ばかりいて夏雲
撃ち抜かれた七月の空
気づけば壁に囲まれる
天井に電灯ふたりの天体
樹々黒々とまばゆい蝉吐き出す
薔薇園隅にわかに狂いだすスプリンクラー

                横 浜  空 心 菜
かくすこといくつもあつて生きてゐる
秒針をじつと眺めて老ひてゆく
ざるそばを腹一杯の夜空かな
骨組のかすかに残る己かな
くつたくのない小学生の笑ひ顔
スプーンが平行にあるテーブル
にはたづみ雨をしつかりはずませる

                大 仙  熊谷 従子
雨がつれて来た虫が梅の実を零す
カーネーション地に移し二度咲きの真紅
不器用に生きた昭和の姉と長電話
畑のミニトマト色づいて今朝を明るくし
粽(ちまき)結ぶ母の手ほどき今は昔
雨上り一気に伸びた草の丈
青田の風いつ時涼を置いてゆく

                東 京 小早川 すすむ
剱岳シロップぶどう桃みかん
日の陰にたたずむ老女夏睨む
味変わる定食屋の広東語
スニーカーで蹴飛ばす1300円ランチの街
蛾の影に光る米
歩く端から街路樹燃える朝
街はいつも遅れをとる伊勢丹は秋

                 川 根  小籔 幸子
若葉伸びて山はまるく膨らむ
野生動物生きるに必死一晩で畑の馬鈴薯食べた
母の日カーネーション持って娘の笑顔
待っていたツバメ電線に並び長旅の話延延
半分の月眺め羊羹半分が丁度いい
あの山の向こうに住む人と同じ山見て畑仕事
梅漬ける手のひらは真っ赤な太陽

                  東 京 さいとうこう
オルガンのふた閉めたら保育士だけの七夕
立食いつるり夏一群
東京無線の緑を越え少年の夏
太陽に塗りたくられた若いカンヴァス
ホースぶん撒くホルモン屋おんな喜寿らしい
舞う蚊の六畳一間ごと蝉の声
おまつり囃子タンクトップから妊娠線

                   福 岡  清水 伸子
緑陰から待ち切れず初蝉黒揚羽とび出し
雨上るコップに一輪ハイビスカス可憐
別の星かと思う気温急上昇
寒さは辛い夏はもっと耐えがたい庭の木
豪雨ついに避難指示でも私従わず

                武蔵村山    千田 光子
紫蘇が畑でおお威張り
支柱よけて地をはうミニトマト
冬は寒いぞの声煎餅蒲団打ち直す
想定外が多すぎて命が消える
明けの明星満月富士山正座していた
木いちご真赤なじゅうたん鳥待機
じゃが芋出来た小さいねおばさん