海紅俳句 1

五月号の同人の方の句をアイウエオ順に今回はア~サ行まで掲載します。
   タ行からは2に掲載しています。 

           浜 松   安達千栄子
地下鉄の出口間違え知らない街に出会う
セーターの厚さ薄くなる羊雲の空
ほったらかしの着物にシミ罰が当たった
桜の一枝病室に春の風吹きましたか
春はものうげな空をつれて来る

           浜 松   渥美 ふみ
餃子の消費一位とか二位とか平和な街です
空っ風によろけそう海辺の松のふんばり
これくらいの坂なら行けるしだれ梅見頃
スリッパが反抗するのです歯科の短い階段
手にとってみたいほど落椿そっとそのまま
梅が終わりこの日から居座っている雀

           浜 松   渥美ゆかり
猫のしっぽ長いゆっくりゆらす道
明るい朝です思いっきり納豆かきまぜる
バス停降りる人靴春の色
春が来たり冬が来たりちょっぴり芽が出た
思い込みで冬の根を抜く大きく尻餅
湖は春の風もうちょっと長生きしましょう
冬陽少し傾いて工事現場も片付いて

           東 京   石川  聡
梅に雨つめたく春が不整脈
桜から紅い気が溢れている
ひざ痛む花びら踏む春の陰影
行列明るく猛毒展はやる春休み
眼の奥から胸へ眩しく春が痛む
花籠をいっぽん逸れあなたへの言葉も
さよならの候にて熟した赤を贈るみぎり

           相模原  院瀬見美登里
ちらかった部屋春の陽ざしのはなうた
ひとり減りましたこぶしの花を待てず
桜咲いたと聞くおもちゃの汽車動かし

           東 京   伊藤 郁子
桜一輪流した涙光るてのひら
神田川流れ緩やか水嵩もなく
賑やかな子等の声なく学道路暮れて
認知症と言われた友の声低く高く
束の間の安らぎの一杯のコーヒー紅百合の香と共に
東京の月にも風情あり
芽吹き日を忘れぬ雑草の寒い朝

           秋 田   伊藤 角子
山脈が気候を分けて雪降る
連日北へ帰る白鳥の声
雪焼けしている道端の椿
雪消えて庭の雑草青々と
小学生のこんにちはに返して春風
稽古の間にふわっと膨らんだ青もじの花

           浜 松   伊藤 三枝
春の空切り取るとんび一羽入れ
黄色や紫徐々に春が調ってゆく
春の感触ですかこっくりベンチの人
霙あっさり負けたオキザリスの黄色
答なんて出なくていい紫花菜咲く

           鹿 沼   岩瀬 憲一
春蘭の蕾ふたつ風和らぐ
土手の土筆と瀬音聞いてる
せせらぎの煌めき春日に騒つく
匂いに誘われ焼芋買ってしまった
三月の別れと出会い靴を買う
浜松大内愛子
色あせたアルバム捨てきれずまたしまい込む
彼岸寺迄の道それぞれに花を手に
風に椿が庭にてんてんと
坂道は息切れ桜はまだかと登り

           東 京   大川 崇譜
できあい弁当文字通りなら愛はある
膨らむ目黒川まだだけどまだなんだけど
レンゲの茎へレンゲ刺す田んぼの首飾り
桜と川面のタルタル600 メートル
ふきのとう苦くもう花火の注文いただきました
やわ肌にあんこ纏った白い春
葱買ってかえろう急行だけとまる駅

           香 川   大西  節
高速道轟音にいつもおびえている蛙
行司装束玉椿ちらし東を指す
久留米椿覆輪そっと風を入れる
残り火くすぶる如月の赤い月うめる
聞いてほしい仏のお顔ふしめがち
頬白目白雨近づく談笑
「イカナゴイマドレ」下津井浦々ひびく売声

           氏 家   折原 義司
トランプはノー日本は花札で勝負
北の暗殺は国がらみVXは怖い
彼岸中日暑さ寒さのバランス点
蕗のとうポン酢に漬けると苦み減る
冷たい雨に晒された桜の蕾は震えてる
あちこち花見の誘いもち行きます

           福 岡   河合 さち
お雛さま飾るも仕舞うもそのプロセス
母91歳に春色ブラウス送るも電話も一方通行
3・11震災と夫と6年これからも直立不動
外壁塗りたて柿若葉まだ見ず
引っ越し間近か娘と墓参り桜の息吹みた
線香娘の指に触れ不調法は私似ね
孫とのこの半年一緒自転車に乗れた春

           足 柄   河合  禎
箱根に沈む陽が遅くなって春
貝母きみはパンクチュアル優等生
白木蓮蕾ふっくら艶やか
村とは町とは何かあらためて思う六年
大統領になる人辞める人これ民主主義か

           東 京   笠原マヒト
誰もいない境内の隅にくくられたおみくじ
しめ縄がまかれて大木は神になったのか
誰も降りない無人駅車窓から眺める
春らしくなったと話している夫婦が行き過ぎた
道はくねくね脚はくたくた
地蔵に一応手を合わす
誰もいないが観光地

           国分寺   梶原 由紀
春宵はのっぺらぼうが満員です
なくすことこれから清潔な卒業証書
花束持って帰る分譲地おなじ坂
植木の跳ね返る水の春
花束きいろ笑いながら逃げている
往ぬる逃げる去る梅から咲いた
三月コーヒー窓ボサノヴァが晴天

           東 京   上塚 功子
寒い日暖ったかい日繰り返しの沈丁花
枯れ蓮の先に翡翠止まるの待っている
土筆勢揃いグッドモーニング陽へ笑う
若さ変わらぬお顔しみじみ雛納め
菜花を刻み三色ご飯の青み
池面きらめき柳絮次々生まれている
一足お先のぼんぼりゆらり桜待つ

           大 仙   熊谷 従子
雪掘って越冬野菜の青い味に覚める
疼く傷あとさすっても春風は無口
こだわりは捨てたマイペースで進む
言いそびれてばかり赤くなる唐辛子
彼岸だんごは北風へ土産に持たせ
ポストに手紙を落とし確かにポトリ
転ばぬ先の杖ついて朝顔の知恵を知る

           東 京   小早川すすむ
ゆく舟とくる舟鋭角に海
甥育って3四歩
隣人また引っ越し猫が幽霊の噂
万国旗の商店街誰もいないけどめでたし
湯上がりの銭湯死者一九名のテレビ
肌に赤く冬
病みて聞く知らぬ時間の声

           川 根   小籔 幸子
スギ花粉飛びたい一心風を呼び
風花を追いかける子らに舞い込む目に口に
冬雲春に押されて桜草庭いっぱい
芽吹く裸木に思いっきり背筋を伸ばす

           鹿 沼   小山 君子
淡雪喜ぶ園児に消えてしまった
一筆書の代筆を娘に頼る
方角は東北ジェット機にめざめる深夜
病の夫を見守るだけのきさらぎ
スーパーの片隅焼芋の匂いが人をよぶ

           鹿 沼   小山 智庸
甥の札幌ワインは〝恋〟若さがトロリ
空屋通り朝からサイレン空っ風
金柑日の色青年パン屋が店開く
物の芽が備えた個性の摩訶不思議
春浅し小高い丘に人住む火の見櫓も
馬酔木と猫柳のコラボ傘寿越えの二人
この世で会いたかった木葉木菟と青き狼

           見 附   紺  良造
ワンツーワンツー家鴨春へ踏み出す
さらさら里へ流れ春の小川と歌われ
名残雪深々明けて霏霏と降り
名実春という風の論告を聴く
木々の芽も寒星も少しざわめき
心のツノ矯めて沈丁花匂い嗅ぐ
箸置きの朱塗り箸の浅春譜

           福 岡   清水 伸子
晩白柚の木枯れる植えた亡夫に六年おくれ
寒風池の道知り合いの犬ダウン着て
庭に白ハラせっせと苔ひっくり返してる
桜の芽ふくらむ公園日向を万歩計
暖冬乗用車池にドボン女性助かった
池の主白さぎ一羽今日もゆうゆうと立ち

           秋 田   菅原 瓔子
三月祈りの船は空にお帰りなさい
鳥が黒くひかるから銃弾とみまがう
海が変わり帰って来ない魚たち
オカリナの早春賦ラジオに目醒めて
子育ての衣服と共にあるおもいで
耳に溜まる雑音振り分ける
忘れられない花の名で傷を埋める

           横須賀   杉本ゆきこ
春一番波がしらもぶっ潰す
海猫テトラポットに並び春の観客
春ジャズ聞いた雨も弾む
気持ちも知らないで白木蓮が祝福する
明日でお別れデッキブラシでゴシゴシ
茶色黄色ピンク色蕾膨らむ
白いペンキ垂らす作業着の男は鳩になる

           武蔵村山  千田 光子
私の前猫飛び出す隠れてもしっぽ見えるよ
友人がインフルエンザ手も足も出ず
中国の野球選手プロに成り親孝行
雨風釣りに行けない兄家で不満は釣らないで
柴犬秋田犬世界の人達をいやす
気仙沼三月生まれの一年生不憫で心痛める親達
災害を乗りこえ農業プラスITと逞しい