海紅俳句 2

8号タ~ワ行の方の作品です。ア~サ行は「海紅俳句1」にあります。

                                                                           牛 久  高橋     毅
木陰の無数の穴はセミが出たのだ
時が惜しいアブラゼミ緑陰濃いつくば中央公園
この年にもアブラゼミが来て安堵している
妹と弟と久しぶりに布団を並べる蚊帳の思い出
東京2020屋外の運動は避けてください
敗戦日@新京駅熱暑の貨車の中
今ある命が稀有だ敗戦引揚栄養失調食うものなし

                 静 岡  田中   教平
禁煙大変ガムばかり噛む半日
禅の本借りて寝室にて座す
計画を立てようぜあまのがわらに親指突き立て
さみしがらせる僕には甘えない猫
歩いて一滴の汗となるまで
蝉の声に心が火傷する
草擦ル

                                               横 浜  田中 耕司
雨続きの七月ノーゼンカヅラくどくど
梅雨明けピカチュウがスタンプラリー
ふりかえった夏の匂い向日葵
今年は駄目だろう無花果のふかいミドリ
まっかな嘘は槿の花にとじこめました
扇子パタパタしおからとんぼ来た
ぼんおどりの太鼓提灯台風が来ている

                                              東 京  都丸 ゆきお
立秋押しのけ猛暑居座る
枯落葉カラコロ台風十号に玩ばれ
青柿風に負けるかと枝にしがみつく
妻に替って蔓延びる雑草を引く
空蝉寺院の門前力尽く
台風迷走日韓関係こじれる
近しい人病むを聞く寝苦しい夜だ

             倉 敷  中塚    銀太
今日からは残暑ですよと自らに
終戦の日昭和二十年は暑かった
うら盆に台風雨を持って来た
曽孫とお休みなさいのハイタッチ
なるがままなさぬと決めた日の速く

                東 京  中塚  唯人
悲しいわけでない蝉も赤子もちからいっぱい
汗したたらせ西瓜かぶりつく男の心意気
 お盆に二句
台風来たる煙りに書いたラブレター届かない
盆踊り太鼓の音は親父から届いた便り
早く行けよと台風の背に秋が忍び寄る
天上天下唯我独尊ここは揚羽の通り道
将軍さまご乱心風鈴も眉をひそめ

                 浜 松   中村 加代
列島日照り続き赤信号も焦げた
戦後七四年遺児だった夫も旅立ち
戦死の父に逢えただろうか夫は黄泉へ
献立あれこれ盆の帰省を待つ
母の繰り言聞き流し終戦日近づく
おばあちゃん大好き孫は甘え上手

                  倉 敷   原  鈴子
台風情報もくれんの葉を散らす
遠くに飛行機音と耳鳴りと
ステンドグラス絵あれこれ考えて雨模様
古代まほろば草いきれの原っぱ
夏草の背丈あしたこそ手紙を書こう
そうめんのゆで汁あふれる午後がはじける
孫の思春期そっと肩に手をやる

                  北海道          ひつじぐさ 
熱々のカレーライスや八月尽
グラスくるくるとクレープペーパー
さっぱりと重曹水で床を拭く
読みふける大昔のパンフレット
旅立ちの夜下弦の月の光

                   横 浜  平林 吉明
耳穴へ心地よく黄昏すべり落ち

雲ひとつない空から肌に内臓に
弄ばれた傘の嘆きをまた開き
句の出来そうな今朝はウクレレ
バナナが並ぶジージー蝉も鳴きだした
リモコンに取り囲まれる夜の手と足
お墓の百日紅あの日の涼しさ貸したまま

                    山 形   ま さ
満員電車みな無口である
こころ落ち着く車内の風冷たくて
虫たちの求める真夜中のMan

                    福 山    無 一
しぶしぶ暑さを着て外出する
常に装備してひとに接している
プールを守る柵うらめしく炎天下
置き去りの黒い紙袋ひどく出血している
二階の部屋にどうしてありんこ
死んだエアコンの染みのように蛾
流れ星の背中に願い事を投げる

                      横須賀   森  直弥
湯につかる 蝉の声かすかに響く
水溜り浮かぶ夏空
夕暮れに線一本あり尾根つかむ
貨車過ぎ夜風の静か

                       岐 阜   森          命 
長梅雨明ける鮎が網目をくぐる
土が暑いと言うその中で生きる緑
乾ききる盆の僧暑いとは言わず
満月なれど心にゆらり盆提灯
大型台風ゆっくり秋が忍び込む
盆過ぎの井戸水の温度の寂しい
種まく土を育てる残暑さなか

                       大 仙   森川    チヤ
風鈴の鳴らねば寂し鳴ればなお
天界の空席埋めるいわし雲
青空に突っこんで行く夏燕
父と子の空に飛ばせりシャボン玉
長雨や軒に小ぶりのかたつむり
つなぎゆく児の手の温し蛍の夜
朝顔やラジオ体操5分前

                       軽井沢   吉川 通子
働きすぎた悲鳴だ冷蔵庫
噴火の一報まっ暗浅間山に目を凝らす
お高くすますシャインマスカットは横目で
暑さ去ってやけに赤い夕焼け
眼を大きくして蝉の脱皮を話す
あっち向きこっち向き向日葵小ぶり
台風一過まだまだ青くて小さいリンゴ

                            東 京  吉村 紅鳥
起き上がれなくて左右へ芋虫ゴロゴロ
赤っぽい蛇の尻尾が掴めない屁っぴり腰
ぷっぷっまだまだぷっぷっ トイレへ
市道をUターンの毛虫はスピード違反
打ち水を吸う2匹のアゲハふわっふわっ
風のモンシロ蝶はくの字・への字に
相模川からのアオサギは朝帰り

                          山 形  若木 はるか
月山溶けてしまうよ夕焼け
蓮の花ふうわり真昼の夢育ててる
誰の向日葵ゴッホのモネのゴーギャンの
保冷車の扉TOKYO2020色褪せてる
うしみつ時に鳴くとは蝉の奴め
キキョウに本音見透かされてる
来客です馬追虫の髭のそよろが