海紅俳句 2

新年月号月号タ~ワ行の以降の方の作品です。ア行~サは1にあります。

                    静 岡  田中 教平 
汗して帰る朝草の花
一人の時間なくてさびしい草の花
風呂掃除終えて縁側一人草の花
黙って食べること面白くないテレビもある
ぽかぽかあたたか靴下履いて寝る
風の音する夜薪をくべる
人生したしくお汁粉いただきます

                 横 浜  田中 耕司 
むらさきしきぶのちょうどいいあいまいさ
ぶどうの枝から秋が消えてゆく
雨ばかりの十月終った木枯し一号
児童公園黄落冬です
素足じゃ寒いかりんが黄色くなってきた
さざんかてんこ盛り冬待ったなし
保育園の小さな庭つわぶきがむきだし

                 東 京  都丸ゆきお 
沈む太陽を歩数計が追う
湯タンポはブリキだったあの頃
木守柿二ツ渋くてゴメン
柿落葉埋める蚯蚓は冬眠中だ
今年一番の寒波だって父の命日
背中痛いと妻明日は雨の予報
病む友あり我もそんなおとしごろ

                 倉 敷  中塚 銀太 
二度咲きの黄バラ小さい今日は
小春の日障子に木の影ゆるり
杖つく身除草剤も立ったまま
ウォーキング眼に石蕗の黄と緑
幼な児のにっこり顔や皆誘う

                 東 京  中塚 唯人 
ぎゅいぎゅいオナガぎんなん小さきを歎く
空は柿色冬の熾火(おきび)燃えだした
黄葉振り払い子供たち力いっぱい鬼ごっこ
たわわぶら下げ秋の枝は
憂き世はらうよに木々はやがて軽くなる
金星大暴落タクロウは寂しゅうて花道
季節がない街へ便利を買いに行く

                 浜 松  中村 加代 
小雨の神橋若い二人は相合い傘
参道は人の波掻き分けて眠り猫
電線の椋鳥騒がしい夕餉の買い出し
ワイン一杯に酔って街の騒めきを帰る
医院も寒々冬景色母の手を引く
友人減ったと逢えばくり言母の老い

                 倉 敷  原  鈴子 
この里の昔と子供とペンペン草
大根大きくなる虫が同居する
この里歩けば見覚えの小さな祠
あぜ道抜け道あたらしい家が建つ
平地になった岬のそこに石仏
冬到来山の端の日射しカタムク
風のみち風に選ばれた落葉いちまい

                 横 浜  平林 吉明 
妻の書く宛名のない手紙
海にまで来て裏切る
言えない言葉から銀杏の落ち葉
川面に日の当たる朝はセイタカアワダチソウ
深夜二時非通知携帯着信音 
木枯らしのパソコンからあなたを削除する
部分入れ歯それぞれ秋のクラス会

                 秋 田  船木 恵美 
帰郷の弟遠廻りでも土手道が良いと云う
最後のバジル摘む夕暮れの低気温
あじさい赤紫に色濃くして終末飾る
寒空につるいんげん頑張っている
今年は小春日和もなく暮れてゆく
雪の予報まだ青いいんげんの支柱片付け
法事みんな老いて集う人も少なくなり

                 江 別 本間かもせり 
星雲はたましいの色で輝く
ドラフト終わり油断した畑の顔
新しいコンビニの朝に降る雪
さまよえる卵がけご飯の朝
雪にぶつけていつか消えるんだ

                 四日市  正木かおる 
撫でられて仔犬になっちまった
ラジオ波で悪いところをこんがり焼く
楽園の入口で切符がない
もみじを仰ぐ大気圏の底
ずっと待っていたわとシネマのひと
ボックスから成層圏へ乙女の旅路
蜘蛛という野生も眠りに就くマイホーム

                 横須賀  森  直弥 
他人の夢くるみ割り垂れ落ちる
水鏡うつらない、わたし
コンビニ深夜迎えにきてよ球状星団
ナマズ瞬(まばた)けば降りる夜の帳(とばり)
リュウゼツラントリカエマスカ
祖父は薪をくべている蠍(さそり)の火
干し柿で刻む律動せえので橙色

                 岐 阜  森   命 
台風二十二号浄蓮の滝はずぶとい
なるほど蓮丈は下田の人デジタルカメラを向ける
雪のない富士を見まちがえる神無月
台風と初霜百坪の畑に秋は短い
今年も咲くの約束まもり千両まっきっき
冬の覚悟剪定の松と俺とで決めたんだ
いただきます勤労感謝の栗きんとん

                 大 仙  森川 チヤ 
栽培の独活が餓鬼大将のまま老いた
新米の一粒一粒が活きている
捥がれずに雨に打たれて柿一樹
にぎやかに落葉舞い上がる過疎の里
洗濯機に花を飾る勤労感謝の日
初冠雪の秋田駒の貫禄さらに輝く
どの家も懸け大根に村どっしり重くなる

                 軽井沢  吉川 通子 
紅葉山三つ越えて来たところ
白川の里へ降るふる紅葉ふる
茅葺きの屋根コーヒーの香に誘われる
話ほころぶ黒鬼灯の花朝の市
あいたいなあ木守り柿
お日さまいい仕事するね軒下の柿
零下八度もう少し布団の中の朝

                 相模原   吉村 紅鳥 
鮭の白子としらたき小鍋でコトコト
歩道で拾った半乾きの鰤の頭
ずっこけた階段の主犯は藺草スリッパ
女郎蜘蛛の巣をかわしたモンシロ蝶
台風一過の青空に枇杷の花
煮凝りの鰤の目玉がゆらり
台風一過の大熊座○△座

                 山 形  若木はるか 
紅葉陽のやま陰の山
交差点上の螺旋かえってゆく群れ黒々
月山冠雪おかえりなさい
便利集めた砦に籠る
踏まれて虚栗(みなしぐり)
凝るものはじけよ檀のごとく
鳥影またたく木かげ透かして