海紅俳句 2

五月号月号タ~ワ行の以降の方の作品です。ア行~サは1にあります。

               牛 久   高橋  毅
朝の薬飲む辛夷の花もう直ぐ
雪虫への思い明日七九歳
病癒え妻の中国奥地の蘭香る
老後です妻と俺と炬燵
芽吹く柳保線夫の服黃色
防災スピーカー東日本大震災から六年
カラオケ館の句会上野公園のサクラが見える

               静 岡   田中 教平
ふんだりけったり石ころばかり
つかれて湯に入るそれは哀しい裸である
月に頼んますと告げる湯のなか
たばこ吸わないように黒髪乾かす
月に明るめられ母と二人の家で
早朝仕事の傷だらけの指が十本
時計は進む何も持たず座する

               横 浜   田中 耕司
二人ともゴーカイな寝ぐせ小学生の春
梅が満開そこにメジロが飛び込んできた
新芽つんつんカナメモチまっしぐら
緋寒桜の赤い色になんとなく安心している
袴姿の女学生がこの駅で大人へ乗り換えるんだ
黄色い春からとってかわったユキヤナギ真っ白だ

               東 京   都丸ゆきお
同窓会の誘いに妻病状報告の返信
ミニ水仙咲いたのに木瓜はまだ莟
カミさんおでかけお昼はレトルトカレーだ
十坪程の庭バリバリ霜柱ふむ三寒四温
昨日つぼみだったシンビジューム今日咲いた
志織合格おめでとう赤ちゃんだった君に泣いたジジ
稀勢の里横綱になったよ照子さん元気になってネ

               倉 敷   中塚 銀太
啓蟄に日向が誘う外歩き
地面から黄の蕊椿の今日は
ぽっかり往く白い雲春連れて
せんべいパリッ思わず音のなつかしく
お水取り昨夜だったか春期待

               東 京   中塚 唯人
コブシがパーッとやがてサクラがピースだ
桜咲くまえ梅がマジ本気出した
地にある辛夷の蕾の無念をひろう
いけない酒場が回ってはるのよい
日脚伸びそぞろ猫が向かう沈丁の宴
過ぎゆく風に冬の重さ着せた
諸葛菜か花大根か考えているうち店過ぎた

               浜 松   中村 加代
おじいちゃん聞こえますか孫の木魚
やっと花植える気になったパンジービオラ
ユニホームは大きめ孫一端のサッカー少年
春に誘われ真先かおり苺
家族増えそうな予感さくら草さくら色

               倉 敷   原  鈴子
冬木立透かし模様の空は灰色
わき目もふらず松ぼっくり歪んでる
床の間の侘助おちょぼ口ですましている
冷たい風がゆらせる寒緋桜の満開札
風になびく冬枯れ厄神社の石段覆う
ひそかな動きチューリップ芽が泳ぐ
彼岸会いそぎ足で苔むす墓のむこう

               横 浜   平林 吉明
無言の声を聞きたいきさらぎ最後ページ
さあ遊ぼうもうすぐ老人にも開花
ふざけてるアンダルシアのおとこのように
古いドア出て知る真実白い梅
窓外に黄土高原おとこの後ろ姿を想う(花韮忌)
黄泉蛙日活桃色白川和子(渡辺隆夫さんを偲ぶ)
もくれんときめき散歩の時間

               鹿 沼   福田 幸子
春嵐去り満天の星に近づく
かんぴょうをやさしく結ぶ四月の母
檸檬蜂蜜豆乳が春の光に溶ける朝
季節売る花屋の夢のパステル画
後悔の渋みふつふつ蕗の薹

               江 別  本間かもせり
左ウインカー好きなんだからしょうがない
待ちわびた春でタヌキ轢かれる
春の月照らす駅から徒歩五分
夜まだ長い手回しラジオ鳴らす
いろいろな親子のかたちの残雪
トラックに積むこの空の色が好きだった
この先の橋落ちたまま連翹の芽

               東 京   三沢 昭夫
婆の誕生祝にみやげは肉
又一人逝きて春の朝
遺言は書いたけれども
認知症顔を見てもしらぬとは
七十代機械を理解出来ずに

               京 都   村井  州
ふるふるつちふる微熱色
はっさくにレモン文旦もう泣かないで
寒波に若葉よ起きてはいけない
テレビお祭り白湯呑む寝る
慎ましく互いにやさし三寒四温
こうなご休漁ぽつり眠り猫
そっともたれるさくら二十

               岐 阜   森   命
急に春です迷った星一つ落ちた
春の道少し譲って検定車お通りなさい
メジロはウグイスと勘違いされている奴だ
女神のウインクに冬のタイヤ干しておく
耕運機爪新しくそこのけそこのけ春の草
目印は朽ちた芽吹く山にない境界線
畑の一角に生き残り彼岸に間に合った猫柳

               大 仙   森川 チヤ
土の温もり持ち上げて蕗の薹顔出した
飴玉口に転がしながら散歩道日脚伸ぶ
さらさらと音たて流れる弥生の小川
千の手に春風もらい観音様の笑顔
聞き流すことのいくつか雪解水
ときどきは寝返りをする猫の日向ぼこ
彼岸入り鴉がお墓に先回りして待ってい               

               軽井沢   吉川 通子
博多弁からかわれ卒業してからの歳月
春を放つ雪除け室のヒヤシンス
雪解けましたよ地中のあなたへ
浅間山にも春が来た
もう雪はいい三月の風を信じる
いよいよ悲鳴あげました66歳の脹脛
東京吉田東仙
河津桜さいて桃色まぶしい
さむけを感じれば又発熱のワンパターン
庵の園のお昼は園児で一杯
春空は小鳥と鴉のせめぎあい
小さな字が書けなくなった遠視でもあるまいに

               相模原   吉村 紅鳥
封筒に折目をつけるお尻のプレス
ベストの小穴ふたつには黒マジック
小雪を払った青木の実をひと枝
紙袋は娘から戻ってきた「はだしのゲン」
抜いた包丁キラリ台所侍
入れ歯をはめて句会へ明日は予約日
春一番二番畑にびっしりホトケノザ

               山 形   若木はるか
ラナンキュラスひらひらのはなびらのあいだの春
泣いてもいいよ今日は三・一一
この期に及んで降るのか暖房フルスロットル
月山おぼろ春の顔
あられパラパラ乾いた音でたたく三月
でっかいぼたん雪向かってくる高速ホワイトアウト
知っている顔声はかけない