海紅俳句 2

5月号タ~ワ行の方の作品です。ア~サ行は「海紅俳句1」にあります。

                                        横 浜  田中 耕司
やっぱり主役はさくらよ満開だもの
癒し系なのさ花海棠のうすい紅
ハナニラの青を哀しい色だと思ってしまう(ハナニラ忌)
おおえばりだったコブシは引き際知っている
おにぎりがたのピンク石楠花真っ盛り
したたかにひなげし更地にもはびこる
遅咲きの濃いサクラは散ってしまった

                  東 京  都丸 ゆきお
くずれそうな雪だるま明日は俺の誕生日だぞ
三寒四温激しく花隠す雪
アリが二匹でヒソヒソ話コロナに気をつけろと
コロナに抗い今日も生きてやる
窓を開ける窓いっぱいの柿若葉朝陽に光る
交差点色とりどりのマスクに追い抜かれ
下界騒然こでまりひっそりと咲く

                  倉 敷  中塚 銀太
春彼岸お墓の草はもう緑コロナ菌小学生の列消えた
花まつり今は暦の文字だけに
谷渡りお山へ帰る置きみやげ
街の外鶯去《い》んでホトトギス
浅蜊がうまい少年期には潮干狩

                        東 京  中塚 唯人
ハナニラが見ている今宵の満月ことさら赤く(花韮忌)
風に吹かれ賑やかにツツジがパンチラ
落ち着けニッポンもうすぐ茶摘みの唄だ
買い物はお気に入りアベノマスクして
鯉のぼりよ今年の弥生は長すぎる
鱚は青空に恋して釣られてしまった
コンビニで間に合わせよう四月の恋は

                  浜 松  中村 加代
朝に夕にコロナの話折り込みちらし減った
ラインが頼り友達みんな籠ってる
花冷え独りのキッチン独りのコーヒー
独りも飽きたテレビも飽きたそして今日が暮れ
力強く今を生きよう友より絵手紙
夕餉の買い出しは自転車日脚伸び

                  倉 敷  原  鈴子
思い出せない花の名今日の幻月
ふじの花しなやかに強風と遊ぶ
めじろ山ブドウの実まだあるか
たけのこ玄関先にある暖かい朝
あくびひとつの隙間ドラマ終焉
落椿の朝その美しいぬけがら
つばめ来るにぎやかに恋の予感

                  横 浜  平林 吉明
凄まじく荒ませ雪のさくら散る
あなたに逢いに微醺匿名となり
病棟ざわつく朝日に電源ON
窓からの風に乗って飛び降りる
すべて許される夜明けではなかった
感情だけが篠原池に浮かぶ花びら
そのあとの優しい言葉さくら散る 

                  福 岡  ひつじぐさ
扉の前一片の花びら
ウイルスに街静まりて鳥とりトリ
置物の犬にバンダナ四月尽
旅に出た気持ちになって海の色
外出禁止令手紙を取捨選択
引きこもる猫に話しかけられ話しかけ
青空を眺めるアンネ・フランクのこころ

                  秋 田  船木 恵美
句友と談じて笑って心ゆくまで一日
白佗助の椿そっと咲く寒さ
かすかにピンクの色秘めて乙女椿
窓辺の乙女椿日に日に蕾ふくらませ
私の不調に反し紅梅満開
気の抜けた私を窓辺の椿笑っている
お彼岸の墓前なぜか涙がにじむ

                  四日市  正木 かおる
忘れてたよ約束どおりにチューリップ
遅霜のことコロナの話ジンジャーティー
もうすぐ届く茶畑の風
しばしの別れソーシャルディスタンス
水田の一番乗り鴉ずぶずぶ
早苗田いちまい覗き込む世界の広がり
おふざけお手玉きらきら回る日向夏

                  福 山  無  一
春風も信じられない令和二年
新型コロナの空の下に全校集会
戦時下を感じるマスク配給制
一人ひとつかお国からのマスク
眠気吹き飛ぶ志村けんの急逝
雲の上の人も例外なくコロナ感染
占い屋が丸もうけの令和二年

                  秋 田  森川 チヤ
陽を吸いてパンジー色濃く笑いけり
春風や子供等駆け出し跳ね駒
まな板の葉を切る小春日和かな
座布団に猫の足あと春の泥
太陽の真下を選び土筆の群生
足早に急ぐ靴音今朝の霜
春耕や鍬のくさびをとり替えて

                  岐 阜  森   命
ミツバチ羨ましいか墓いっぱいの菜の花
人里を離れて魅せるいともかしこし山桜
幟なしひとり手を打つだけの春祭
籠る家四方水田は海に似て
浮く心なきこの春をきらうことはない
冷たいが「春風ですよ」と吹いてくる
区切りと決めてニット帽洗う日寒戻る

                  横須賀  森  直弥
春よ来い通行人ちいさなハミング
スロウボート君は春の海に乗って
雨上がりの森で春の色探し
春風が頁進める友はまだ夢の中
烏の黒は光る春雨に打たれ光る

                  軽井沢  吉川 通子
いざ咲かんさくら色あふれる
今年もあのしだれ桜へ
青空に辛夷の花の透かし模様
真っ赤な山茶花が満開そんな気持なんだ
街の余白をタンポポが埋める
会えない気持ち詰め込む宅配便
誰も頼らない手作りのマスク

                  東 京  吉田 東仙
ようやく入荷してきた買いだめトイレットペーパー
君達マスク君達の行方知らないか
ボタンかけ違ったまま令和号すすむよすすむ
こんなことでのびた五輪大丈夫かコロナ広がる
久々の作句 ブランク大きくペンネーム泣いてる
一人くらす巣ごもりのうちに花々咲きだす外
今年の桜の見すごしはコロナで花見禁止令

                  東 京  吉村 紅鳥
金柑のひと皿を妻の遺影に
旋回の鳶はグライダー江の島で「鬼ころし」
雲の衣を脱ぎ捨てた茜の富士山
リフトが長いこと急なことの高尾山
食堂からの山々にはにかみのほほえみ顔
金ピカのねずみの根付けを買いました
池に蟇のおたまじゃくしがびっしり真っ黒

                  山 形  若木 はるか
カシャンカシャン精密なロボットみたいにヒヤシンスひらく
桜までが遠い
さくら光へ溶かして春を呑むくすり
贅沢な春カーテン開ければさくら光る
風まかせ光まかせしだれ桜気まま
牡丹の芽紅く祈りの手ほどいてゆく
崩れてしまった春の欠片《ピース》つなぎ合わせる