海紅俳句 2

月号月号タ~ワ行の以降の方の作品です。ア行~サは1にあります。

                    牛 久  高橋  毅
新年の真っ青な空筑波山を包み込む
夕焼け七変化愛犬と散歩に出る
短日が影絵のように赤く暮れる
突然の暖気枯れた芦原輝く
カイツブリが潜っている立ち去り難い
カワセミを見た日今日はよいことが
除夜の鐘残しておきたい文化遺産

                  静 岡   田中 教平
寿司だったものが残っている
骨の数を数える
怖々拝む北極星
ワサワサしている髪揺らして歩く
吹かれて陽のした歩いてゆこう
大雨が洗っていった道に霊性
食パンをこっそり頂くひとりなのに

                                                      横 浜  田中 耕司
バイトのJKやる気なしケーキの箱が真っ白
赤を主張センリョウマンリョウおしょうがつ
破魔矢クルクル晴れ着の子供スキップ
背伸びして蝋梅は春を見ていた
赤にちがいない寒椿がほころびそうだ
裸木は枝先に小さな莟つけた
あかむらさきの小菊冬がひかる

                   東 京  都丸 ゆきお
初詣列の後ろに並ぶその後(あと)に又人の列
でっかい月だ今年はいい事ありそうな
初雪降ったニュース今日小寒
初孫成人の日雨もよい振袖写真と赤飯届く
あったかい大寒明日は大雪の予報
午後から大雪校庭の桜木白い花が満開
妻の背中痛む俺のせいかそれとも寒さ

                    倉 敷  中塚 銀太
柚子風呂についつい長湯日も暮れて
正月飾り手作り物は遠くなり
息止めて冷水顔に年明ける
朝一番微かに点点雪降った
冬空に浮かぶ満月ガラス越し

                                         東 京  中塚 唯人
ハロウィンもクリスマスも軽く許してお正月
マンリョウ赤ひときわヒヨドリの番兵のいて
永遠にとは言いませんお正月日和ですね
褞袍(どてら)も炭団(たどん)もにんげん七十年ゆめまぼろし
茶碗弄びネコジタ自慢とは言えず
北向きの雪残りサザンカの寡黙
夕日壊れて冬となる

                             浜 松   中村   加代
ガラス拭き終わってカフェオレ縁側の一服
師走気ばかり急いて「せいて」スタンドの長い列
スーパームーン新年のハンドル握る
風が唸っている硝子越し蝋梅満開
炬燵温温(ぬくぬく)猫ゆうゆうと庭を行く
独楽廻す孫の顔ちょっと得意気
メダカ元気か初氷びっしり

                                          倉 敷  原    鈴子
シジミ蝶動かず枯れ葉の日だまり
足裏冷える畑ぬかるみを隠す
七つに満たない七草がゆとする節目
ひとあしひとあし霜柱に朝のあいさつ
老猫のくしゃみ寒風にさらされる
菜花のおひたしひとくちまだ寒い
干し柿かじるあなたの山は元気ですか

                  福 山  陽陰野 無一
暖房の皆無を笑わせておく
借り暮らしの楽にもたれる
洗濯機の老いをいたわる
害なき戯れ言すぐに消えた
尾と背のヒレから外を見てる
おもいで歴史のむこうに消えた
横になってゆっくりと沈没する

                  横 浜   平林 吉明
溜息とタバコの煙とおんなの蒲団
やさしい男の中央線に乗り換える
冬日に染まる街を中央線は走り抜け
傷つけ合って缶からビールあふれだす
告白する何もかも枯れ果て
悪意めざめる寝室のファンタジー
太もも桃いろ上書き保存

                                               秋 田  船木 恵美
忙(せわ)しく雪降る何も彼も閉じこめる如く
降ろうが吹雪こうが御勝手にもう慣れてます
犬(わん)ちゃんにもエビ天今日はお正月ですよ
おだやかで良かった帰省の航路
春が来たと錯覚する雪の無い一月
首都圏は大雪で雪国の秋田市に雪なし
今日も何事もなく夜のカーテン引く

                                                                 江 別    本間 かもせり
年末の地層からふっかつのじゅもん
エンジンかからない白い息
雪山からバス停生えてきた
厄払い終えてふたたび末吉
敷き詰めた座布団春の勇み足

                  四日市   正木 かおる
揃い踏み父よ小さなテレビ
螺旋ゆたかに横綱の塩
パウダールーム世界一可愛い五十三歳に
いい子に育ててくれて有難うと泣かれても
喧騒にわたしが判るの白杖のきみ
ココアの湯気に護られている
二次会は行かないホテルのティールーム

                   岐 阜   森     命
命日の読経を受け残り日いちにち
星のスキマ空で年越す旅客機は
申すことなし手合わせれば除夜の月
タクアン食べ比べ女房に軍配上げる
定年はとっくに過ぎた妻と二人で初観音
雪なし風なし土だけの畑を初起こし
これはこれは首都で余った雪が来た

                  横須賀  森  直弥
発熱大晦日ふとんに荒野
忘れた星座今夜も瞬く
元日はためいてるブリーフの白
天地を横倒しにしたい深夜
月灯かりで水母(くらげ)さがす

                  大 仙  森川 チヤ
戌年の元朝は雨で御来光に会えなかった
初雀着ぶくれて番いで来て窓つつく
葉ぼたんの渦日毎膨らみ元気を貰う
朝明けた「カア」と一声寒鴉のご挨拶
寒九の水一気に呑んで息災を願う
野仏の前掛け乱れる寒の風雨
言いたきを云わずに割った寒の卵

                  軽井沢   吉川 通子
雪は自由自在きょうは大きめの紙吹雪
詰め放題三百円りんご真っ赤なお顔して
キッチンのぞいてニコッ歩き始めた蒼くん
リュックに冬帽子新幹線の夫婦旅
お菓子になったりタオルになったり上野の香香忙しい
三ヶ日が過ぎ青空に朝のお月さま一つ
オリオン星座見上げる遺伝子三代かな

                  相模原  吉村 紅鳥
西空に満月 森に降る雪
「まだ瞑想かい」青鷺いっ本足
胸を抉られた山鳩から南天の実
尻を浮かしたオナラが丸くてパップン
時は横滑りした目覚めの20分
栗の枯れ葉がはらり雀が降りた
斜めに切った牛蒡は八目鰻の口

                  山 形  若木 はるか
何が明けたんだ変わらぬ日常である
雪原かすかに青みを帯びる夕闇
三度の闘いむなしくまだ降り続くらしい
遠くの山ほど白い雪国の法則
ひそやかなおしゃべり若者たちの後部座席
子を抱きカートも押し休日ディズニーショップのお父さん
雪山に陽が射すそれだけで良い