海紅俳句 2

7月号タ~ワ行の方の作品です。
ア~サ行は「海紅俳句1」にあります。

             牛 久  高橋  毅
カルミアがわずかしか咲かない吾過てり
椿バッサリ師匠はユーチューブ
新聞手に今日のガーデニングの策を練る
去年の剪定失敗を知りもう一年生きる心算
人に比し律儀バラの一輪一輪
日本企業沈むトップ右顧左眄先を見ず
IT格差片やウクライナこなた日本

                                                横 浜  田中 耕司
カタバミのやわらかな黄色に騙されてみよう
検察庁のタンポポおそらく不起訴だろう
ビンボウグサなんてヒメジオン大ぼやき
公園の隅っこシャガの花ひとかたまり
錆色になったモッコウバラもうおしまい
夏帽に入れ替えた黄金週間って言っとこう
小学生にあいさつされてドギマギ子供の日

            倉 敷  中塚 銀太
屋内に百足ここは野山か人の家
この顔誰(ダーレ)お互い問い合う齢(とし)になり
結婚記念日祝福今や六十年越え
庭散歩みどりの中で日光浴
雨三日走り梅雨かと今日も亦

            東 京  中塚 唯人
初夏を好ましく思う水羊羹の器にあれば
花道に向日葵咲き乱れ大相撲夏に惨敗
些末なこと拘らずと芍薬大きく開く
背中に陽を背負い蕎麦屋の暖簾をくぐる
年も半ばを過ぎゆっくり急いで夏が来る
山法師は天を見据えて五月の雨を待つ
これ見よがしにトマトがまっ赤な実を付ける

            浜 松  中村 加代
昔の旅を思い出すリラの花満開
朝取り空豆籠いっぱい夕餉のビール
雨降り続く梅雨の走りか紫陽花の花
食器棚すっきりダンボール四杯捨てた
地歌舞伎三年振り役者の台詞も決まった

            浜 松  中村 美代子
マスクはずしてパークヨガ新緑の公園
何もしたくない今日も曇り空
豆ご飯にみそ汁夕食とする
晴れた日に山登りして深呼吸

            倉 敷  原  鈴子
ローカル線の相客は麦秋の風

愛するその気配に花芽がふたつ
野の草をどっさり活ける器は野原
汐入川から春潮に乘る木の葉
無人駅ホームの日射しゆらゆら
卯の花腐し雨呼ぶような枝垂れよう
連綿の春の祭りは幟だけ

            横 浜  平林 吉明
欲望かぎりなくハナミズキを散らし

正義なんて仄暗い三日月
老眼鏡の遺影が私になった
みちたりてアロエ先っぽ赤くなり
眠れぬ夜小雨の深い川を渡る
叔母の死に目に薫るニオイバンマツリ
無知鬱果ての夜の検索

            福 山  無      一
危険な時代に落ち着きなく草木
ドローンに救われたり殺されたりと戦地
あわれ侵略戦争の駒に若者たち
保身に閉じた貝の中で苦悶している
根っこから倒れている雨上がり
引き潮のあちこちに壊れた魚
哀しみが足をとめた

            御殿場  室伏 満晴
空が白くて欲望が輪郭つけて

哀しみは逆さにならない代田だ
薫風のベビーカー押す妻の誕生日
渡さなかったカーネーションが暮れている
命は救えぬ治療している初夏のこと
あなたが触れた紙片を大事にしていたソーダ水
草の刈られて草の匂い

            横須賀  森  直弥
霧雨抱く森木々光る

葉の上の雨粒ら踊る
雨に濡れ漲る緑
積もる望郷雨音は雨音重ね
夢のままの夢

             東 京  吉川 通子
からから踊るドウダンの白い花

飛行船繰り出したゴールデンウィークの空
孫たち背比べちっちゃいのの関西弁の勝ち
宮下公園はビルとなり渋谷ますます迷路
黄砂来たらしい手すり拭いた雑巾
まっ赤な花つけブラシの木ここは南国東京
麒麟草九蓋草も咲いたよ散歩道

            山 形  若木 はるか
芽吹きの雨やわらかく触れてゆく

明日ではなく今をやまなしの白い花
青空へ陽気な躑躅のおしゃべり
おぼろに白く記憶の庭の父の石楠花
初蛙アジサイの家に棲む
白牡丹うっとりほどけてゆく
芍薬の幸福を活ける