海紅俳句 2

10月号月号タ~ワ行の以降の方の作品です。ア行~サは1にあります。

            静 岡     田中 教平                
ふるさとの水に映る山又山
生きながらえてしまうことの黄色いちょうちょ
汗して帰る朝の仕事終え少しヒンヤリ
小銭鳴らして慣れた道ゆく
ハンバーグにのった目玉焼きからゆっくり食べる
仏壇の親鸞をながめじっとじっとながめ
草に寝て広がる水としてのわたくし 

            横 浜  田中 耕司                
木槿の白を掃きよせる朝の音竹箒の音
アサガオはお空の色だから手がとどかない
まっしろな道着まだ二人とも白帯の姉弟
お盆休みの貼り紙ピラピラもぬけのから
おみこしわっしょい町が二拍子になる
盆踊り終わったかたずけられる提灯がさびしい
カミソリ使う慎重に思われニキビ大事にしとこ 

            倉 敷  中塚 銀太
棚経の僧に暑さ慰め礼心
つくつく法師朝から夏半分過ぎた
お墓参り芙蓉と百日紅背にして
うら盆会仏間に独り居誰を待つ
夕立の語遠くなった現代版
                
            東 京  中塚 唯人
両手いっぱい太陽受けとめ百日紅暑きをいわず
蝉で一句と思いさぁてミーンミンミン
氷イチゴで舌赤くしたこと内緒にしておこう
てんやで天丼サーティワンでアイス夫婦の夏は続くのです
女房とは聞き分けよい神様今朝もゴーヤふたつ?ぐ                
さてと関係ない話だが「思い出のメロディー」見てしまっ
白いビー玉投げつける夏の気まぐれ無理難題 

            浜 松  中村 加代                
馬も牛も鞍付き遺影微笑んでいる
プランターのキューリ馬にして少し小太り
ぼた餅手作りこれも盆供養
聖岳一緒に登ったと友夫は山男
寝不足朝のスムージーはゴーヤー入り
家庭菜園切り戻して茄子の色艶 

            倉 敷  原  鈴子                
自分をかくす七十路ひそむ情熱まだ
孫の背丈しみじみ列車のり継ぐ
残したいもの少し秋の種まく
どうする本棚にあふれるアルバムが重い
秘密にしておく石ころにころんだ話
高速でない高速道路もつれる蝶と行く
雨蛙のろのろ夕べの指定席 

            横 浜     平林 吉明                
泣き崩れる背中の線香花火
緩和ケア病棟はずれヘチマの黄色い花
父は父のまま散り夏のお祭り
くつ背広ネクタイそれと父のアルバム
雨雲に押しつぶされる少年の罪と罰
百日紅おとめ心に咲く時間
ユウスゲゆれる台風の予想進路
               
            秋 田  船木 恵美
草取る背に小雨が心地良い
亡き友のあじさい模様の扇子淋しい風
もう一度くぐりたい仙台七夕通り
我が家は今夜眠れない深夜と早朝と帰省ラッシュ
雑草は強い体力が追いつかない今年
昨日は日赤今日はお坊さん達ここは募金箱通り
主婦になった孫娘ローリエとバジル詰め込む 

            江 別     本間かもせり              
あの夏青空と言えなかった
アイドルは四時十七分三十六秒の揺らぎ 
忘れ物ふたつみっつ秋の出来上がり
黒い蝶ばかり立ち上がる
主任技師は新型うろこ雲開発中
葉が落ちるもう遮らなくていいんだ
ブルース吐き出して冥王星の楕円軌道 

            東 京     三沢 昭夫
盆休み予定表はまっ白のまま
今年は初戦勝ったよ甲子園
ますます「忘れました」便利だな
地元銀座テナント募集増えたよ
振れど振れどもからぶり捕虫網 

            浜 松  宮川 侑子
陽おち未だ暑い夕空くっきり細い月
庭の端から小走りどこへ小鳥の親子
わたしを連れ回した母の故里遠い夏
夢で会うなんて過ぎ去ったなつかしい人
花火クライマックス涼しい部屋をあとにし 

            京 都     村井  洲
空果てしなく少年きゅうり丸かじり
でき栄えが申し訳ない八月の芋ごはん
わっしし唐の逆襲だ
もう少し見ていたい彼女が月に帰りそう
肝臓の茸まどろむあなたの寝息
嫁と姑まあるい西瓜を仲だちに
老いを見守るしあわせがある 

            横須賀  森  直弥
ぐらぐら麦茶の向こうラジオ体操
「我ウナギ生鮮品ニシテ絶滅危惧種ナリ」
スズムシはビート刻む晩夏
肉焼クヒト海ヲ見ナイ
夏の午後さするとキウイの皮
銀座二丁目コピー機探し夕立
炎昼ピカチュウ群れヨコハマ 

            岐 阜  森   命
不順な夏ファーストフードも悪くない
痩せたキツネが住み着いた稲のびる田
孫と入る川の中少し離れてとぶは鮎
下り古里へ向かう列田舎のネズミ上り線
焼津の海よこれがエレキだそしてシラス丼
蝉の声ひとつ残らず盆ちょうちん
雨続きの畑がジャングルだ 

            大 仙  森川 チヤ
Tシャツに首をつっ込む終戦日
老の性早寝早起き昼寝の日課です
夏祭り獅子頭とれば茶髪の女子に驚き
待ちにまった朝顔にやっと数えきれぬ花の数
穴を出た蟻はとり合えず天を見上げる
空き家の雑草の中から紅い鬼薊みつけた
刈られても伸びる行く先探す昼顔の花が好き 

            軽井沢  吉川 通子
凌霄花どうどう梅雨の明けた町
芙蓉白い花やっと晴れた空だから
擬宝珠の花ゆれて大きな葉が守る
ベランダごしごし台風に便乗し
息を切らして宮益坂の夏上る
遠慮がちです終戦の日の百日紅
急がなきゃ栗の木大きな実を付けた 

            相模原  吉村 紅鳥
麦藁帽子が咥えた紐が鯰の髭
真夏日だ真っ赤な太陽が民家から
なんで?生きているつもりのコオニヤンマ
アザミの綿毛はテトランパトラン
指を挟もうとした頭だけのクワガタ虫
居間を走りまわる散兵の蟻
左右の表札を見て行くカトリヤンマ 

            山 形  若木はるか
夏の夕ぐれ走り去ってしまいたい
凌霄花こぼれこぼれ燃え残る火花
ノースリーブ白い風走って行った
黒揚羽ニアミス雨上がりの風
オニヤンマ垂直上昇機
静かに病んでゆく夏
蝉よいっそのこと轟音