海紅俳句 2

月号月号タ~ワ行の以降の方の作品です。ア行~サは1にあります。

             牛 久          高橋    毅
色とりどりのみどりいましばし
つつじの花がらを摘む来年も生きる
髭を剃り歯を磨き赤き薔薇
老人が喜々として遅々として
暑くなく寒くもない草を引き腰を伸す
この歳となり庭の花々と心通わさん
修学旅行の生徒上野公園濃いみどり

             静 岡          田中 教平
南無きみ
つつじ散る青春も齢をかさね
やせた猫がすこうし餌を食べてくれた
縁側句作するに蚊が寄ってきた
たんぽぽ吹いて酸欠
とおく車道のおとが波のように
枯れた竹のしろさよ、寒い

             横 浜    田中 耕司
大きな木瓜がおわる春もおわり
タンポポの起床時間はやくなった
足もとから春になるハナダイコン
ウメモドキに同意する春
レンギョウがひかえめな春を云う
ゆらゆら藤のむらさき五月に入った
ユスラウメの赤い実から春になる

             東 京    都丸ゆきお
歩けなくなる怖さに歩く妻の健気さ
今日眼科明日は外科へと妻の予定
母の日卓に娘や嫁の花ある嬉しさ
物流には迷惑かけます鹿島から旬の筍
ツバメ番が新居さがしてヒラリヒラリ
兄の予後見舞う俺の体重気にしてくれた
小川鯉幟およぐカープ今年も強い

             倉 敷    中塚 銀太
俄か雨緑陰踊る音たてて
登校の小学生の列さっさと
スーパーへ付いて行き買う要らぬもの
五月晴れ今なおうぐいす谷渡り
庭歩き九十才にはこれのみか

                                                東 京    中塚 唯人
女房殿植えた茄子さんぼん娘が嫁ぎます(娘嫁ぐ七)
子ツバメの声響く狭い軒下おおきな月明かり
旅立つからと今朝の太陽ちょっと騒ぎすぎ
バージンロード腕くんで初老の爺さんト・キ・メ・キ
新婦から花束もらった母の涙は見ないことにする
親という幸せ今日確かに頂きました
馬頭観音に夏の花嫁報告した

             倉 敷     原    鈴子
窓あけて寝る下弦の月と居る
寝れない夜得したような損したような
電車の中みな下向いて指先よく動く
ムカデでた大騒ぎする家族の和
夏花の種まき天気予報くもりのち雨
花屋の立ち話小さい鉢ひとつ買う
片づけが中途半端みつけた古い絵葉書

             横 浜          平林 吉明
バルバラのうた五月雨る眉墨
みなとのメリー佇む闇夜交差点
人生雨夢幻廃用症候群
あっけらかんと取り毀された蒼空
頬ふれる指先に温もり
生きたまま捨てられている
あなたを毀してしまいたい天気

                                                鹿 沼       福田 幸子
噴水の天へ憧れ永遠の一途
鳩時計の無邪気 心の奥の個を覚ます
五月晴 雲一つない空に孤独
庭に流行のパクチーイタリアンパセリ乗り遅れまい国際化
郷は田植え真っ最中身をかくすキリギリス

                                                江 別         本間かもせり
救急車行先さがす郭公かっこう
時は来た国道渡るカタツムリ
こんなんじゃ跳べないツツジ吸い込む
ネズミ捕まった新緑にこだまする
飛行機雲なぜ迷いがないのだろう

                                                東 京        三沢 昭夫
似顔絵の母の顔に口がなし
母親は二人の子に疲れてる
夏場所のはやくうまいは嘉風だ
ふるさとに井月の墓と碑がありて
彼岸への入口で足踏してる

                                                浜 松  宮川 侑子
カレーとシチュー作ったと家を出ていち年の成果
枕並べて思い出ばなし部屋のあかりいつまでも
五月の空は晴れて動けるうちにと病人見舞う
花も雑草も乱れ相変らず元気な庭

                                                京 都         村井   洲
蛙めく水に緑に謳うこころ
早苗田じわじわ地球の青髭
サボテンだってだって緑深まりぬ
いびつな海馬に五月の風吹く
チーズトーストの火傷程度にふしあわせ
遅れてまた叱られた晩柑そろそろ
脳天気俳人宣言ここに 小声で

             岐 阜   森     命
山の蛙は用心深い太い声して
好天晴天苗に水やる日本の五月
燕は働く鳥だ見よ俺の汗
ダム放流する雪解け水が大あくび
バラ園の石畳雑草の意地が咲く
朴葉の花高いところみどりあますところなく
雨よんでおいて雨やどり雨がえる

            大 仙   森川 チヤ
五月の風乗せてブランコ揺れはじめる
合羽着た犬が先行く早月の雨
セキレイが来て今朝もピイピイにタクト振る
「ハ」の行のお仕舞は「ホ」で止まる桃の花
目覚めた山の吐息か鴉鳴く
晩年を預けてアサガオの種を蒔く
つつがなく老いて昭和の菖蒲風呂

             軽井沢     吉川 通子
春ですよって水仙すみれチューリップ
ふわふわふわ風に乗って誰のいのち
カッコーの三拍子加わった朝の歌
雪の重みに耐えどうだん嬉しい新芽
ズミの花咲いてカッコー鳴いてさてさて
早朝から大きな声で木の天辺のお客様
ほらあそこ桐の花が背伸びしている

                                                相模原  吉村 紅鳥
葱の土をこそいだらゴンズイの髭
塀を越えて勇み肌の黄色のケマン
切落しベーコンを咥えてオオトカゲの気分
轢かれた蟇はカラス葬に雨後の花霚
公園に少年2人のベースボール
切手を舐めて封筒を上下返した
目のひと休み 洗濯物を干すベランダ

                                                東 京  吉田 東仙
見づらい目にツツジの波がつづいている
人みしりする目白がかくれてついばむついばむ
タンポポとツツジ残して春が逝く
鳴りやまぬ工事の音あちらこちらと
花の大きなハス見て古代を思う
一つむこうの蛙の恋歌頭にいっぱい
庵の園緑におおわれ見そこねた蝌蚪たち

             山 形  若木はるか
シロスミレ小さな幸せがいっぱい
シロスミレに赦されている
躑躅もりもり咲く植木屋さんの花庭
山藤の名所教えますうらぶれたスーパー駐車場の端
サンショウウオ生まれた池の底まで陽がとどく