海紅俳句 2

九月号月号タ~ワ行の以降の方の作品です。ア行~サは1にあります。

             牛 久  高橋 毅
幟旗に風なし今朝の夏
集配回数一回のみのポスト赤い炎暑
袋をかけてもらえない一房の葡萄
台風誕生黄みを帯びてきた稲田
桔梗が今朝も弾けて咲いた
若竹が七夕を待っているてくれた
室温二十六度、水又水
青鷺と鴨たちに縄張りあり

             静 岡     田中 教平
夏の盛りに見つめる足の爪が長すぎる
遠路はるばる菓子折り下げて来
虫又虫が鳴き夕飾りがつくられてゆく
涼しい風よ眠る前に唱える南無阿弥陀仏
月とわたくしと親鸞と三人
畳替え頼むか、小銭を握っている

             横 浜  田中 耕司
梅雨入り今日ツバメのヒナがかえった
アゲハもモンシロも落ち着きのない奴さ
ビワがなりビワにうぶ毛があり誰もとらない
夏が明けてくる椿の実がまんまる
ザクロの花のつぶやきだったのかもしれない
空っぽの電話ボックスが哀しい
今はヒルサキツキミソウの黄色が

             東 京  都丸ゆきお
雨ニモ負ケズ暑サニモミニトマト頑張レ
いんげん豊作ゴーヤは不作の我が農園
暑いたって俺のせいじゃないトランプに言ってくれ
九州の雨関東のダムの上に降れ
雷(らい)様大暴れ故郷栃木想い出す
俺の水遣りに物言いがついた
色白の孫水着のあとくっきり夏休みはじまる

             倉 敷  中塚 銀太
やっと来た今日から広重東海道
抜け殻耳にはしぐれ朝早く
目の前をとかげちょろちょろ日射し中
タブレットひ孫動けば思わず一緒に
ウォーキング働き蟻を踏まぬよう

             東 京  中塚 唯人
躑躅の葉伸びきって夏と答えを出す
雁首そろえドクダミの花媚びを売る
あじさい頭垂れ選挙カーのありったけ
ナッツナッツナッツそおれ夏花火
近ごろ気になる暴れる雨とビヨウ柳の黄色
蟇に乗り児雷也になって霞ヶ関歩いてもみたい
は力の限り大横綱白鳳と叫ぶ

             浜 松  中村 加代
青田続くひたすら走って湖に出る
釣り舟一艘湖凪いでいる
いろいろあって梅雨となり鞄いつもの所に
汐満ちてきたサンダル片手の親子
プランターのミニトマト孫プチプチ取る
好みの家具好きな器で独りの夕餉
大玉西瓜届いた新盆間近

             横 浜       平林 吉明
かすかにいのちのいきをしている
うそつきにすがりつき
逃げつづける跫音
古着屋のシャツになるおんな
病院の樹木はなにも話さない
すべて思い出とけ始めるアイスクリーム
雨にうなだれるキイちゃんの自転車

             鹿 沼    福田 幸子
登り額紫陽花の変奏曲に贈られる
小説の行間からの初夏の風
降りそそぐ太陽の愛持て余す
伸びをして今日は海月の一日
どくだみの群生に独居の義母 百歳

             秋 田  船木 恵美
私に似ずスラリと伸びた蔓ありいんげん
毎年の慣わしバジルの苗株分けし友たちへ
お濠の蓮の花咲き秋田のロマンス始まる
暑さ忘れさせる夕暮れのネムの花
待った雨は大雨で土手に水位見にゆく
施設から返された不用品の中に叔母の靴もあり涙する

              江 別     本間かもせり
歯車に疲れテトラポッド
攻撃的水曜日裏をかかれた
ミュール背伸びする浜風
風鈴あとは溶けるだけ
連休は予定の形で迷宮入り
猛暑日の風吹くだけで大事件
二度寝三度寝世界は寝癖を待っている

             東 京     三沢 昭夫
立っても坐っても横になってもこの暑さ
下校時の子等の寄り道やきとり屋
孫叱りその後味の悪さよ
若者の浴衣に靴は今様か
子のための手本になれず父の日

             浜 松  宮川 侑子
降りそうな降らなさそうな庭の小鳥とび立った
喜んでもらう収穫最后のチビたなす
つゆ晴れ間三方の窓開け風通す夏の設えに
豪雨の爪痕山国の山が崩れるなんて

             京 都     村井  洲
風に選ばれた風車だけが回っている
マンゴーの懐に太古の斧がある
白桃ぽたぽた昼下がり
とうきび弾ける太陽の子供
小兵の夏場所ぼくら待っている
日々祭りらしく風の太鼓
晩鐘流れる治水の村に生きています

             岐 阜  森       命
レシートでとばす紙飛行機梅雨空だ
梅雨の申し子蜘蛛の巣に気をつけなよ雨蛙
酒のしずくそうかと見上げる天の川
梅雨さなか軒下のばして人を待つ
岐阜城だれのもの来岐の人に自慢する
一泊して空と牛だけの高原に分け入る
都会どまんなか蝉が聴きいるドラムソロ

             軽井沢   吉川 通子
青梅二袋できたと夫の梅酒二瓶
栗の花咲いては雨に落とされて
栗の花咲いた梅雨晴れにむせている
都会育ちの玉葱頂き田舎育ちの玉葱の隣り
百日紅覚悟せよとばかりに咲きだした
合歓の花赤い花白い花の並木道があり
夏日ゆらゆら空っぽの部屋

             相模原  吉村 紅鳥
オオミズアオが歩道で乾いてぺしゃんこ
指で弾く手紙の消しゴムの屑
拾ったコーヒー缶から溺死のコメツキ虫
啄む雀が横目でチラリ逃げません
モンシロ蝶が水を吸う苔の小道
猫が見上げる畑のオランダアヤメ
庭々の木を巡る産卵のカラスアゲハ

             山 形  若木はるか
月山よ空が青すぎる
梅雨の朝きりりとエプロンの紐
チビカマキリごめんよそこ掃除するんで
刺された腕の天の川
ぬるい夜風が夏だぜ
主役交代はいっ凌霄花
初蝉のさびしい勇気