海紅俳句 2

7月号タ~ワ行の方の作品です。
ア~サ行は「海紅俳句1」にあります。
              牛 久  高橋  毅
暑さ一服さざなみキラキラ鷺一羽

努力義務のヘルメット置去り公園の夕暮れ
モンシロチョウ見え隠れ緑の植田にわたる風
剪定に勤しむ師匠はユーチューブ初夏
花ガラ摘み来年の花が見えてくる
己書(おのれしょ)というもの初体験先生は娘です
共と協 協議、協力、協調 やっぱり協 新しい民主主義

              横 浜  田中 耕司
ハナダイコンとのとっくみあいに勝ったヒメジオン
ヤマボウシが口とがらせて誰も居ないって言ってる
ニセアカシアの白い花が風にゆれて五月に入る
ブラシの木の赤がやせてきた誰が使ったんだ
雨樋に絡まれて泳げない鯉のぼり見る子供
ブロックベイ登るカタツムリこんなふうに生きよう
ゆらゆらたよりなげでもしぶとくしなやかヒナゲシ

              倉 敷  中塚 銀太

蝶が飛ぶこの風景明日も亦
四月でもみんなコタツ当たり前
足の数ムカデ防嚮あれやこれ
卆業入学テレビ映像今日も亦
昭和の日つい天長節と言う年齢

              東 京  中塚 唯人
ふくらはぎ痛めとぼとぼ柏餅は買いに行く

君はきっといい大人になるヘルメット被ってさ
蕎麦をたぐりつ辛み大根は武夫さんの想い出
六回目コロナ注射老人だからありがたく
横綱夏場所を締めくくる回れ回れ弓取り式
北の富士さん帰ってこ北陣さん、佐ノ山さん頑張って
筍ご飯食べ忘れ庭の山椒に愚痴る

              浜 松  中村 加代
小さなトランク一つ駅の騒めきの中

サングラス新しくして新幹線ホーム
街路樹勢いづいてきたイオンの賑わい
イヌバラの棘が私を急き立てる
ストーブと扇風機同居している五月半ば
紫陽花がアクセント雨あがりの庭

              浜 松  中村 美代子
スーツケースいっぱい連休始まる

菖蒲湯草が浮いているとはしゃぐ孫
ジュビロスタジアム背番号50を追う
歌手なのか曲名なのか今どきの歌

              倉 敷  原  鈴子
パセリを食べる青虫の未来

なくしたもの忘れている晩春晴天
パフォーマンス不思議な動き脳細胞青嵐
海の古町まよいこんだ細道に石臼
どくだみの白い花ぎっしりの庭平ら
梅雨入りと来た珍客に翻弄される
はち切れそうな笑い新緑に転げる石ころ              

              西 宮  松田 慶一         蝶光り風となり戻り来る
栗の花香って白杖止まる
鼻の無いナマコの自由よ花粉飛ぶ
犬の糞踏んだ春踏んだ
支離滅裂に雨跳ねて夏近づく
廃工場の朧かな
廃校に真新しい鯉のぼり

              福 山  無  一
朝の寝ぼけた頭に染み入る日射し

きょうも空虚が行き交う
薄汚れたホワイトボードに白く残っている
腕時計の黙って働いている
お店より安売りの完売した
誰かの影と化している
なんにもない手のぽかんと開いている

横須賀   森  直弥
北の地は空青くりんごの花わらう
風駆ケテイク北国ノ春
若草に紙袋カレーパン重ね            

              岐 阜  森    命
野良猫愛されニャン太ニャン吉ニャン三郎
人は旅に出る鍾馗の風に誘われて
赤いカーネーションはや五十回忌の母よ
あなたを継ぐ者座布団が二十枚
遠く誘われて近く来て見る朴の花
一仕事すんで八時の時報聞く畑一枚元気
五月晴れ続くそろそろ麦に待つ心

              東 京  吉川 通子
一日一絵の便り田植えの時を知る

東京の空の下家々の薔薇咲き揃う
裏通りの泰山木知らぬ間に咲き知らぬ間に散る
GWの人まばら六義園アジサイ秘かに緑の蕾
夫婦二人の子供の日蓬粒餡柏餅
フェーン現象来たイチョウの緑に逃れ
夏日となり紫陽花ちりちり日に焼ける

              山 形  若木 はるか
晴ればれ躑躅びっしり揃っている

はらり踊りながらひらく牡丹
ふわんふぁらん牡丹に酔う
ドアミラーとことこ横切ってくカラス
花一つずつ風ぐるまスノーボール散るとき
万緑満ち渡れピチュルリリリリ鳥たち愛を唄う
旅の余韻を抱いている