寄稿万華鏡2

  俳三昧七月纏め              梶原 由紀

  ビル裂けて夏                    すすむ
【句評】
・「夏のクリアランスセール」の赤い幕がビルの裂け目のようにも見えたりして……これは個人的な想像。
・高層ビルの立ち並ぶ都会の空を見上げると、まさに裂けている事を実感します。然もそれが夏ですとより一層強烈に感じます。短律で表現することにより強烈さが際立つように思います。
・お名前のすすむを、句の一部にして読んで納得していました。失礼!
「ビル裂けて」に私はむしろ梅雨の最後に大暴れする天候を感じましたが、最近の夏の暑さは尋常じゃないですから、ことに都会だとこんな風に感じるんでしょうね。
【作者から】
 ビルの間からギラギラと顔を出す太陽と青い空を詠んだ句です。最初は「ビルの裂け目から夏」としていましたが、何か普通だしより短く強くできないかと思い今の形となりました。評の偶然の読み違えも面白かったのでもう一句作ってみました。
  ビル裂きて夏進む

  月山よ空が青すぎる                 はるか
【句評】
・空が青すぎるのは山のせいではないのに、そこに呼びかける感じが面白かったです。しかしストレートな句の分、月山ではなく他の山でも句が成りたってしまう気がするので「月山だからこそ」なところを「空が青すぎる」の部分に込めても良いと思いました。
・小説や映画にまでなっている「月山」実際に見たことはないのですが、はるかさんにとっては深い思い入れが有り魂を揺さぶる何かが漂っているように思います。そして幾ら思いを投げかけても何も答えてはくれないかわりに、ありのままの全てを受け入れてくれる大きな存在に思えます。
・私は信州の生まれなのでこの気持ちとても分かります。ですがそこで止まってしまいました。どうしても、あと少し余韻が欲しいと感じてしまいます。
【作者から】
「空が青すぎる」実は五月に浮かんだものでした。これだけでは句にならないので、空に浮かぶ月山と合わせてみました。
 皆さんに頂いた評から考えると、どうもまだ何か足りないようです。これは課題としてまた挑戦したいと思います。
 皆さん、ありがとうございました。

  空に缶蹴り上げて反抗期チョンにし          梟庵主
【句評】
・「チョンにし」で締めると(そして今は……)とその後のゆくえを感じます。お孫さんのことでしょうか。「反抗期にチョン」で締めるのもいいかと思います。
・空き缶を蹴っ飛ばして反抗期がチョンになるとすれば、こんな楽なことはないんだけど。あとから考えれば、反抗期なんてこんなものなのかもしれないなって思えるような社会であってほしいよな。
・「チョン」がなんだか懐かしい。ちょっと説明っぽい感じがするので、「反抗期が」と主語に持ってくるなどはいかがでしょうか。
【作者から】
 孫の反抗期かという疑問を持った方が多くありましたが、この句は自分の少年期を思い起こして作ったものです。
 遠い遠い昔を頭に思い浮かべました。

  多死時代あじさい今日むらさき             聡
【句評】
・「多死時代」って、どう感じとればいいのかなって疑問が残るな。そこで「あじさいむらさき」ってのも出だしから言えば平凡な感じだな。言葉のつなぎをもう少し考えてみるべきかもしれない。私の好みで云えば、もう少しわかりやすい一句を作ってほしいと思っている。
・一株に花を沢山つけるあじさいが一斉に朽ちてゆく様を詠んだ句でしょうか?「時代」という言葉が大仰すぎて、少し意味が見えづらくなっている気がします。
・あじさいについている沢山の花々が「紫=喪の色」であった点を多死時代に重ねて詠んだ句、私はそう理解しました。時代を花に託した、シンボリックな句だと思いました。
 
  晩鐘流れる治水の村に生きてます            洲
【句評】
・「生きてます」は親しい友人への手紙などでの報告のように受け取りました。「生きています」だともう少し決意や覚悟が見えるでしょうか。
・最近の災害の多さ、山の近くや川のそば、いつも同じようなところで起こっていますよね。温暖化が拍車をかけているんでしょうね。治水整備がされている所も例外なく注意をしていないといけないんですね。そういう覚悟を感じました。
・先人たちが開墾や水害との戦いを繰り返して、治水の村ができたのですね。晩鐘は彼らへの鎮魂の念であるように読みました。また近年各地で起こっている水害の被災者を慮るようでもあります。句の静かな秩序のある風景がいつまでも続いてほしいです。
【作者から】
「生きています」「生き繋ぐ」「生きてます」あたりで迷いました。懐かしい誰かに報告したいような気持ち。一字で変わる印象。そして治水の村は元々水害の村であることなどなど……汲んで頂き、ありがとうございます。
 先人のご苦労も偲びつ、凄惨な水害の映像を前に無力感に囚われています。「生きてます」 くらいかなと思っていましたが、九州北部に続き秋田も酷い被害に。自分、しっかりしなければと思い至りました。
 地域の方々の無事と一日も早い復旧を祈るばかりです。