寄稿万華鏡2

 後半部6句をアップします。
【俳三昧―二月纏め】                若木はるか

  たて書きところどころ曲がった春のしらせ   由 紀
【句評】
・この春のしらせはハガキであった方が絵になりますが、敢えてた
て書きとしてあるので便箋かな?「ところどころ曲がった」が差
出人の姿が浮かんでくるようで目の付けどころが良い。幾通りか
の受け取り方が出来ますが、素直に楽しくて可愛らしい春の秀句
として読みました。
・作者に届いた知らせなのか、作者が誰かに出そうとしてる知らせ
なのか。どちらでもいいが、どこかにそれがわかるような仕掛け
があってもいいと思う。
・「曲がった春の知らせ」は、弓なりの日本列島を言い当てている
ようで好ましく思います。南北、あちこちの景色を海紅句で読ま
れたときか、ネットで見られたときか、いずれにせよ良い仕上げ
方です。ひらがなも実に効果的。
・皆さんの評の通りなのでしょうが、どうも別の何かがあるように
思えてしまう。「春のしらせ」と言うと花だったり鳥だったり、
自然現象に使うことが多いからだろうか。
【作者から】
文章をまっすぐ書くのが苦手で、よく途中で曲がります。ふと自
分の書いたものを眺めた時、うねった列が春のくる様子に重なると
思い句にしました。仲春は草書、夏は大筆、秋は万年筆、冬は楷書
といったところでしょうか。句評を読んでいて、「知らせ」の中身
をもっと突き詰めてもよかったと気づかされました。今後活かしま
す。

  アロエの三角帽子で春をつついてやろう   耕 司
【句評】
・痛そう!びっくりして春が飛びあがるかもしれませんねぇ。春を
つつくというアクションが新鮮。私にとって、春は待つものであ
ったり、見つけるものだったので。
・アロエの三角帽子はおもしろい。アロエの葉っぱがトゲトゲして
るのは何でだろう? と思っていたけれど、春をつつくためだっ
たのと思えてしまいました。
・「つついてやろう」のいたずらっぽさが可愛いですね。春の喜び
を感じます。自解の後で恐縮ですが、私は三角帽子をアロエのと
げで読んでしまったので、赤い花のイメージはありませんでした。
アロエの緑の葉やとげの印象が強いからでしょうか。花で行くな
らば色が出てきても良いかと思いました。
【作者から】
近所にアロエがたくさんある家があって、クリスマスの時にもあ
の赤い花なのか、てっぺんの赤い三角になっているやつをサンタの
帽子にしようかなと考えたんだけど、出来なかった。最近になって、
春をつつくって発想が出てきてつつくならこのとんがった三角がち
ょうどいいかなって思った。

  恵方巻きに異議なく我ら二人の節分     通 子
【句評】
・いまは豆まきよりも恵方巻きのほうが主流ですかね。わかる気が
します。
・「我ら二人」に夫婦の自由な気持ちが表れています。二人では豆
撒きよりも恵方巻きの方が似合っている。節分という一つの祭り
が、新しい型で残ってゆくのが実に望ましい。
・長年連れ添った夫婦の暮らしのささやかな思いを静かな口調で語
る。地味ではありますがアダ花的な句とは違う海紅の息の長さの
所以の一つの様に思いました。
・「異議なく」に「我ら二人の」と続くと、句が硬くなってしまう。
「恵方巻」と来れば「節分」は想像できるので、「節分」の部分を
食べている状況にしたり二人の表情にしたりすると、硬さが転じ
て畏まった面白みになるのでは。
【作者から】
何を隠そう、実は豆まきが負担になってきているのでした。夫婦
二人で小さな声で福は内なんて言ったって……。終った後の豆の掃
除も……。子供がいる時は楽しんでやったのに。ちょっと前まで恵
方巻なんてと思っていたのに、何時の間にか、あれもこれも省略と
なり、今や恵方巻で節分行事を済ませた気になっています。

  青天白日タルト・タタン焼く        はるか
【句評】
・リズムが良いですね。明るく気持ちが和みます。
・簡潔な構成ですが、晴れ晴れとした景、甘酸っぱい林檎そして焼
き菓子のいい匂い。幸福感、作者の心意気のようなものまで溢れ
てくるような美味しい一句。
・タルトタタンって作るの結構大変なんですよね。時間も手間もか
かります。朝から快晴、りんごもたくさんあるし、さあ作るぞ、
というやる気と決意を感じました。
・「青天白日」の畏まった様子が、タルト・タタンを焼く心持ちと
綺麗に重なっていると思います。日々の喜びが音や色合いにも表
れていて、すがすがしいですね。タ行が多く使われているからか、
タップしているみたいで楽しいです。
【作者から】
 紅玉をたくさんいただいたので、タルト・タタンにしようと決め
ていて、久しぶりに気持ちの良い晴天の日に決行いたしました。こ
の晴天をどう句に入れたものか、雪の晴れ間とか何とか考えていて、
青天白日がひょっと浮かびました。潔白であるという意味が、焼い
てからひっくり返すこのタルトに合っているように感じて、採用し
たものです。裏はないよ、いやウラこそぜひ見て下さいよ、ってこ
とで。

  おまえもか。首をすくめているハト    マヒト
【句評】
・おまえもかと鳩に語りかけていて、同情を感じられ、ぐっと近い
距離を感じました。優しさがいいですね。おまえもかの後の「。」
は要らないと思います。
・「おまえもか」の呼びかけに句点。マヒトさんのため息がボソッ
と聞こえるようで、この句の場合は成功していると思います。
・「。」について、私にはどうしても安易な選択だという感じが残っ
てしまう。このマルをどのような選択で使ったのかを考えるべき。
・意外と「。」がなくても同じだったりします。やって見て自分で
考えるのが大事。
・鳩に共感しながらも、鳩は鳩、自分は自分と分かっている作者。
鳩と自分の間にぽちっと入っているのが似合っている。視覚的に
も「鳩に豆」みたい。ちょっとコミカルな軽さが出ていると思い
ます。
・句点について、この句では成功していると思います。
おまえもか首をすくめているハト(一字空け)
おまえもか、首をすくめているハト(読点)
おまえもか首をすくめているハト(何もなし)
淡々としすぎないためにも切れのテンポより長い間合いがほし
い、句意に合うよう情感を込めすぎずに滑稽味を出したいとな
ると、句点がその条件に適しているかと思います。首をすくめて
いるのは寒いからなのか、それとも何か起きたからか。いずれに
しても作者の姿が暗示されていて、一種の仲間意識が面白いです
ね。
・久しぶりに句点に成功している句と思います。この一拍によって
作者の驚きや発見を感じます。これが感慨を生み出し一句をなし
ていると思います。ただし多用はおすすめできません。
【作者から】
「。」か「、」か一字空けにするか考えてみて「。」が一番気持ちに
しっくりいったのです。間を取らずに続けるというのも考えたので
すが、呼吸みたいなものですかね。こういうのって。正直言ってこ
んなに賛否が出るとは思わなかったです。

  夢に影連れて冬野を急ぐ山頭火見た     梟庵主
【句評】
・「山頭火」は俳人種田山頭火のことか、火口から噴き出している
火のことか。俳人山頭火として読めば、全てにピントが合ってい
てよく解りますが、少し説明的。「夢に」「見た」のですから、ど
ちらかを外した方がより幻想的になるように思います。「山頭火」
を火口の火として読むと、作者の姿が現れてきて動きのある句に
思えました。
・どこかを整理できないかなって思いが残る。作者の想いが自身の
見た夢に重心がかかるのか、そこに見た山頭火にかかるのかがは
っきりしていないからだと思う。
・作者の夢十夜の一つと言ったところでしょう。
・夢の句は難しいと思います。夢と言わずとも良いのでは。夢部分
を取っ払って「影連れて山頭火冬野を急ぐ」とかどうですか?
【作者から】
夢はなくてもいい。実は海紅俳人の渡部冬三師の夢を見たのでし
たが、冬三師を知る方も少ないので山頭火の名を借りたのです。