【近 作 玉 什】
平成7年3月号
新年号作品号作品より 中塚 唯人選
–晩白柚―
眠りは保湿クリームの香りにつつまれ 安達千栄子
時雨来て鳥も落ち葉も無口 伊藤 三枝 河原ススキ朝露こぼす冬隣 大西 節
お辞儀繰り返す人の靴の先が細い 加藤 晴正
五十二回結婚記念日見上げる黄金大銀杏 上塚 功子
晩白柚の香り娘二階から降りてくる 清水 伸子
いま冬ですか風がウィンクす 千田 光子
ぷにぷにの柿見切り品私買います 中村美代子
夢の中で誰かに呼ばれて目覚めた朝 無 一 霧に洗われた町もっと腕振って歩こう 森 命 陽にあて風にあて父の本が目を覚ます 吉川 通子
令和7年5月号
四月号作品より 中塚 唯人選 ー冬の景 ―
明治の板チョコずっと私の一番 安達 千栄子
雪積もっている音の無い土曜の朝 伊藤 三枝
洗濯機ちょっと幸せな音がする 加藤 晴正
寒空五重塔が見つめる藁ぼっちの冬牡丹 上塚 功子
春を呼ぶキャラメル色のランドセル 杉本 由紀子
風強し洗濯物左ラインで踊りだす 千田 光子
お雛様鎮座している縁側の朝日 中村 加代
吐く息白い昭和の家 中村 美代子
北向きの窓から見えた雲の自在 原 鈴子
一日早い節分家族の数だけ巻いた寿司 森 命
【巻 頭】
平成7年3月号
首巻 浜 松 安達 千栄子
きらめく言葉の手帳があればと思う
気合を入れてバーゲン春色セーター
神様のお年玉正月の雨
凍り付いた満月屋根の上
ばあちゃんみたい首巻まいて朝の散歩
二度ももらったお年玉ないしょないしょ
家族三代 岐 阜 森 命
おだやかな元日であれ三代揃って鐘をつく
この地に生きてこの地の神に初詣
我が家には我が家の味の三が日
一壺の中千両万両がぶり四ツ
待ちかねた子供のいる家雪だるま
願い一つ増え初観音の甘酒二杯
田一面モグラ働くまだ松の内
平成7年5月号
ご近所 浜 松 大内 愛子
雛納め来年の約束未定です
石段のぼる風がきて梅の香も
新芽の如くつつましくこんな青春あったよな
老いてはなおご近所の挨拶軽やかに
穏やかな春びより無職は自由きまま
春風にまかせて歩く日々の散歩
沈丁花 東 京 上塚 功子
白椿拾いずらり一列に並べた誰かさん
落ち葉の布団剥いで雪割草が目をさます
宝もの見つけたさっそく土筆写メール
ざっくざっく霜柱踏めないまま春
雨上がり朝の沈丁花しっとり香る
マイナンバーカード顔認証の度老婆と向き合う
朽ちた烏瓜の蔓が藪椿を卍固め