近作玉什・巻頭

  【近作玉什】
     六月号作品より           編集部 薦

―初夏の風―
えいっと半袖まっすぐに夏          安達千栄子
暮れれば風来る水割りがいい                  大内 愛子
傍え聞き(かたえぎき)八百屋のおばあは今お空 大川 崇譜
いつも夏休みだが梅雨もある         岡原 舎利
夏の月は誰かが押しているらしい       梶原 由紀
葉つぱには無限の数があいうえお       空    心   菜
梅雨寒ですか歩巾がままならぬ        熊谷  従子
バターをマーガリンに変えた家に覇気がない   小早川すすむ
シュワシュワ若返る琥珀色のハードボイルド   さいとうこう
もう指で辿りつかない貴方          杉本ゆきこ
ヨット五つ縦に横に初夏の風         中塚    銀太
梅雨入り風が連れてきた噂話         中村    加代
飛び込み台から狂った蝶つがい              平林    吉明
竹と麦が秋でややこしい山の緑        森      命
夏服のスカート揺れ合うひとつの傘      若木はるか

  【巻 頭】月号からの特選2名です
  まっすぐ            倉 敷        原    鈴子
 かたつむり子供の目線に角を出す
 遊ぶねこじゃらし今は抜かずにおく
 桔梗まっすぐに遠景も取り込む
 小さな段差につまづき夏雲に見られる
 あわてた蛙飛び出した夕暮れの水やり
 ツユクサの葉に露のバランスよく
 もじずりのねじれに添う孫の所作

  おもてなし          大 仙         森川 チヤ
 ポキポキと白い日傘を折りたたむ
 少年が口笛吹いて文月を駈けて来る
 お役所に梅課ありと云う梅どころ
 涼しさが何よりの「おもてなし」山のお寺
 今落ちんとす大きな夕日を懐に
 失敗は許されぬ齢で梅漬ける
 紫陽花が呼び込んだ昨夜の雨に色を増す