近作玉什・巻頭

  【近作玉什】
 五月号作品より        中塚 唯人薦
―春立ちぬ―
ひょいとUターンなんかして子燕     渥美 ふみ
三月良く晴れた朝の卵かけご飯      伊藤 三枝
栞挟んで人間とじる           加藤 晴正
東京も埼玉も橋のはる          梶原 由紀
雛の笑みふわりくるみまた来年      上塚 功子
雨の音優しい誰かがそばにいる      河内 秀斗
気の付けば爺さんである春日かな     空心菜
彼岸お中日引きこもっていますごめんね  清水 伸子
小さい貴女と春を滑るすべり台      杉本ゆきこ
今日耳鼻科明日眼科で次歯科医      都丸ゆきお
毎朝ありがとう雪柳           ひつじぐさ
顔あげてください冬越しの枯草      正木かおる
空は広がり校庭へと続くジレンマ     森   命
鳶つかむ春風の静か           森  直弥
やわらかき日射しにとける春の雪     森川 チヤ

【巻頭句】
 春の歌            東 京  梶原 由紀
靴買う春のウンパッパ
ゆれてこの猫に子どもがいる
花が点にじむ駐輪禁止の雨しきり
椅子とりどり休業す
晴れを見上げたマンションが白
笑おうなハンドクリームのいい匂い選ぼうな
ひらいた春は興味の調味料

 江戸川の風        東 京  さいとうこう
パン焼ける匂い風となり君の声になり
陽ざしは春キャベツ今日はネコの箸置きをならべ
その気になれば江戸川あの打球はツーベース
童心というには切実ここから先のしゃぼん玉
曇日のつきあたりならば東方の道をゆく
八百屋アスパラガス振って児は手をふって
きっと何千マイルの人生はあの隅っこの芝桜