【近 作 玉 什】
六月号作品より 中塚 唯人薦
―うつらうつら―
どうだんの白の鳴りやまない 石川 聡
うららかな日は全部ゆるめて日向ぼこ 大内 愛子
いちぽかにぽかぽかあくびの単位 大川 崇譜
雨に色良い諸葛菜ついさそわれて 大西 節
四十雀の囀りと共にラジオ体操 上塚 功子
両腕に春を抱えてわらび採り 小籔 幸子
あんあんあん踏み切りの音耳擽る 杉本 由紀子
自転車にヘルメットってどうするばあば 中村 加代
乱れる日本語か革命か春うつら 原 鈴子
花の雨ふたりふかく傘をさす 平林 吉明
火葬場の白まさる遅桜よ 松田 慶一
石の穏やかな部分に座る 無 一
水田にサギあと一日の選挙カー連呼する 森 命
黄色も白も一重も八重も山吹の花 吉川 通子
春ってちょっと背骨の隙間広がる 若木 はるか
【巻頭句】
今月号作品より
生ける物 加 須 大迫 秀雪
捕らえられたアライグマの赤ちゃんたちの鳴き声
アブラムシに吸い尽くされた若苗を土に帰す
カッコーが啼いた仔犬と目が合った
増水の対岸は白鷺のコロニー
あまやかなレモン色クスダマツメクサたちと話す朝夕
マイルスon英ちゃんちの田んぼ
狸とナガミヒナゲシと棒切れ拾った私と
鼻 唄 横 浜 平林 吉明
戦争のおと煮えたぎる蜆の味噌汁
花言葉密会密告天気雨
生きている貌だクスリ何錠も飲む
赤ちょうちん探す二人の春の鼻唄
オオデマリ歳老いてゆく命の投票箱
眠れない句集に香る青い葡萄
生きてゆけない此の世の草となり