【近 作 玉 什】
平成6年12月号
11月号作品より 中塚 唯人薦
―憶良のうた―
かなでつづるあさがおにっきうすくこく 大西 節
街の川黒っぽい淀みの向こう岸へ行く 加藤 晴正
カレンダー一枚捲って九月に籠めるもの 河合 さち
緑の山と朝一杯の茶に今日の一歩 小籔 幸子
庭にいるノラやさしい眼小さな声で朝の挨拶 清水 伸子
食事文句ばかりコンビニで手を打つ 千田 光子
覚えていたはず秋の七草憶良のうた 原 鈴子
抜けない虫歯のように過去 無 一
閑人に農をすすめる自販機の音二つ 森 命
水槽から大ジャンプ亀くんが目指すもの 吉川 通子
令和7年新年月号
12月号作品より 中塚 唯人薦
―風の道―椎茸の甘い香り母のちらし寿司を作る
安達 千栄子
風誘い風に委ね芒のリズム 伊藤 三枝
曼珠沙華犇くあぜみち立ちつくす 大西 節
銀杏転がる子規球場ダブルプレーに歓声 上塚 功子
朝一番秋風が金木犀の香り連れてきた 小籔 幸子
が落ちて夏の果て人病むを聞く 清水 伸子
スプーンでくるくる渦巻きカフェオレ秋色 杉本由紀子
早く殻から出してよ落花生の一人言 中村 加代
秋の蝶とび出すひそひそ話とぎれる 原 鈴子
指ひと差しなぞる嶺遠く天子ヶ岳 森 直弥
2月号
新年号作品より 中塚 唯人薦
―メリーゴーランド―
キャベツ豚肉古本屋雨はこれから高円寺 大川 崇譜
歩いた顔に張り付いたお日様 加藤 晴正
子規さん球場黒土跳ね上げ盗塁セーフ 上塚 功子
一人日曜日仏さまと新茶楽しむ 河合 さち
紫陽花ぐるぐるメリーゴーランド 杉本由紀子
もう少し行かせてくださいねこじゃらし 原 鈴子
暮れない空にやり残しはない汗と土 森 命
思いっきり咲いている晴れの日の紫陽花 吉川 通子
ぐうたら猫と朝寝する日曜日 安達千栄子