12月号作品より
赤壺詩社句会(倉敷)十月七日児島市民交流センター曼殊沙華犇めく畦道立ちつくす 節
風さわやか八十八才迎えた今朝も あきら
「暑いですね」ヴァイオリン一曲終わるたび百畳の部屋 順 子
陽が落ちる落葉の池に鴨が来た 多計士
木登り上手な兄妹遠い日の無花果 幸 子
タブレットから懐かしい昭和の歌 きいち
畦道に行列行進彼岸花 知 子
しゃぎり演奏終了待って時雨 としかつ
うろこ雲芝生広場に寝ころがる 秀 子
セミの抜け殻を見る人生の分岐点 みほこ
あきらさんたびたび笑顔九十九折 史 朗
行く道これからのこと尾花の勢い 鈴 子
さん橋句会(逗子)十月十三日逗子市民交流センター
小さい秋地球の大きい嘘 清 仁
ファストじゃない栗剥の時間 のりこ
午睡うとうと秋風そより 夕香里
ゆめうつつゆーらんゆーらん 由紀子
秋日和引っ越しおんなの三連休 吉 明
秋空にコスモスはまりすぎ 清 仁
百舌鳥の声休日の秋風 のりこ
電線の向こう青空小旅行 夕香里
キィキイキイ本当は欲望の鳴き声 由紀子
あおぞら欲望のモスバーガー 吉 明
成層圏の碧に落ちていく 清 仁
深海の青に引き込まれそうになる のりこ
宮城からきたのリュウグウノツカイ 夕香里
ウルトラマリンの絵の具すべて買い占めたい 由紀子
苦しみを紐とく言葉の成層圏 吉 明
サザンカネット句会(渋谷)十月十九日
渋谷区文化総合センター大和田
人生の秋へ強く踏み込む 暗 渠
金木犀のなみなみならぬ暗算は不覚 とつき
鍵っ子だったんよ金木犀に口笛 叶
金木犀の先ですフラメンコ教室 清 瀬
2年ぶりの句会トウメイニンゲンとなり 凛
老い特典として口角下げるの 崇 譜
ビン朝カン捨てるキンモクセイの風のなか 聡
まだ青い花咲かせてるアサガオに負け 耕 司
しらさぎ句会(東京) 十月二十・二十一日テレ句会
大谷選手詩歌句に登場やっとこさ秋 功 子
夕焼け後のスーパームーンNY熱気のスタジアム 通 子
久々空仰ぐ迷うことなく一歩踏み出す さ ち
米がないさあどうする政官民 毅
阿良野句会(浜松) 十月二十一日 加代居
百貨店は大行列おめあての北海道展 美代子
もやし美味いなって何て返事しよう 千栄子
扇風機仕舞えない残暑続く 加 代
毬の中取り残された栗ひとつぶ 愛 子
新年号作品より
赤壺詩社句会(倉敷)十一月四日 栗林公園 花園亭
松手入れゆきとどき静寂の小道 節
下津井節流れて小夜踊り編笠の列 純 子
変な豆腐屋の笛犬が吠える 多計士
いかつり舟のあかりかぞえて流転風呂 幸 子
よちよちがよぼよぼと手をつなぎ きいち
ピーマンの緑にもあきた食卓 知 子
気がつけば山車曳く吾最年長 としかつ
見られたい見られたくない十三夜 みほこ
名も知らぬ草どうし止まらぬおしゃべり 鈴 子
しらさぎ句会(東京)十一月十七、十八日 テレ句会
里芋南瓜さつま芋ああどれも買っちゃおう 功 子
地平線と雲の隙間から冬朝が光りだす 通 子
届きそうで届かない木守柿日々色づく さ ち
一合の酒ゆっくり嘗めめしを食い寝る 毅
サザンカネット句会(渋谷)十一月十七日
渋谷区文化センター大和田東京流通センター
赤ずきんなその場しのぎなコマ送りな赤外線 とつき
日時指定不可冬葉書 暗 渠
句読点のふりしてんだよ蝋梅の蕾 叶
玄関冬に似て手編みとラッタッタに跨がり 崇 譜
憂いすらなく庭の紅い秋を掃く 聡
冬空ぶかしひるねむり 耳 彦
モンローと同じところに傷林檎 清 瀬
秋が無かった今年のちょっと赤が弱いケイトウ 耕 司
阿良野句会(浜松) 十一月十七日 加代居
掃除組番増える十二月焦る 美代子
カラッ風に負けない玉葱日毎に大きくなって 加 代
おいて出来ぬ事年ごとに増えて 愛 子
海紅ネット句会「俳三昧」十一月
今年は一昨日が秋でした 幸 三
なんでもないような呟きですが、「一昨日」としたところが非凡です。むかし来空氏が「昨日」と当たり前の所に当たり
前の言葉が付くと平凡になるが「一昨日」とすると何かがそこに生まれる、とよく言っていました。ただそれがただのテクニックとならぬよう注意したいものです。
生渇きの気持ちで寝ている 晴 正
なんとも不思議な表現です。ただこれだけでは実際に何があったのかは理解しがたいところです。
地下鉄の階段を上がる故郷は別世界 通 子
この句は昔居られたところへ帰ったときのことだそうです。ただその思いは伝わりません。説明のしすぎはよくありませんがその辺は難しいところです。
外人に囲まれよそ者みたいに浅草寺 千栄子
昔、大会の帰りに参加者で浅草へ行きましたが、そこで大西節さんが「ここは植民地だね」言われたのを思い出しました。渋谷辺りも同様でちょっと首を傾げるときもあります。
金木犀の香り谷村新司はもういない 唯 人
つい先日テレビでアリスを特集していました。その時思ったことです。「君の瞳は一万ボルト」なんて歌、もう知っている人少ないでしょう。
干潮の厳島水が来るまで長居する 命
気持ちはよく分かります。ただし「干潮」と言う言葉がその感慨こわしているのではないでしょうか。「引き潮」とかもっといい言葉がないでしょうか。
スプーンでくるくる渦巻きカフェオレ秋色 由紀子
これは上手い句と思います。
スプーンで/くるくる/渦巻き/カフェオレ/秋色
五・四/四/五/四 この短律の繰り返しがリズムを産み出し楽しい秋を作り出していると思います。これを自然に作るのは容易ではないと思います。これは声に出して読むことです。
俳句は詠むと同じように読むことも大事です。句会では自分の句の評価を聞くことと同じように人の句を
評することも大事です。むかし秋田の草薙猷逸翁の海紅誌を見せてもらう機会がありましたが、気になる句を全部添削しているのです。本来は見せるべきものではないのを特別に見せてもらったのですが怖ろしいものでした。詠むと読むこれは大事なことと思います。